所有者の分からない不動産をどうするか

  • 2019.11.18 Monday
  • 15:01

私が北九州市から東京都へ来たとき、その人の多さに驚きました。噂に聞いてはいましたが、想像以上でした。

地方では「東京は人が多い」と聞くと、想像するのは近所にショッピングモールがオープンした時にまっすぐ歩けないよねというイメージだったり、駅に有名人が来ているらしいけど人垣で見えないよねというレベルのイメージだったりでした。

 

しかし東京の「人の多さ」はそういったことではなく、普通に道を歩く人や自転車、車が多く、またそういった人や車の挙動が予想できないものであることが多いという現実的なものです。あるいは地震や台風等で避難を余儀なくされた時に、避難所が満員で避難できないというのは、まさに地方では想像できない「人の多さ」です。

 

それではさぞかし東京の不動産はよく利活用されているのだろうと思いがちですが、実際はイメージと大きく異なります。

 

東京の街を歩くと分かりますが、やはり放置土地、放置空き家は数多く存在します。体感ですが、人口の比率で考えると、放置された不動産の割合はそれほど変わらないのではないかと思います。それが千代田区や新宿区といった都心中の都心でも存在しているのですから、それが全国的に、特に地方と言われる場所でどうなのかは推して知るべきといったところでしょう。

 

平成28年度に行われた地籍調査では、不動産登記上の所有者不明土地は約20.1%でした。その面積は私の故郷である九州の面積である367万haを超える約410万haです。そしてこのまま放置された場合、20年後の2040年には、その土地の面積は北海道の面積に匹敵する約720万haになるという試算があります。

 

規模的に大きすぎてピンとこないかもしれませんが、皆様のご近所にも、長年放置されて雑草が伸び放題、建物は朽ち放題という物件がいくつかあるのではないでしょうか。そして、台風の時にその物件の瓦が飛んできたり、虫が異常発生したり、異臭がするといったような問題を目の当たりにしたことがあるかもしれません。

 

さて、以前、当ブログでも色々と空き家対策を真剣に考えてみたことがありました(「空き家対策を真剣に考えてみる」)。

 

政府は平成30年11月15日に、「所有者不明土地の利用の円滑化に関する特別措置法」を一部施行、令和元年6月1日に全面施行しました。この法律は地域のための事業に所有者不明土地を活用することができるというようになるものです。地域の事業(以下「地域福利増進事業」)とは例えば、買い物が不便な地域なので日用品の買い物ができる場所を作るといった事業や、町おこしのイベントを行う広場を作る、あるいは防災のための施設を作るといった、広く公に役立つ事業のことです。したがって、民間企業や自治体、NPOや町内会といった単位で利用することができる法律になります。

 

ただし利用するには、そもそも建物がない空き地(物置や小屋で床面積が20平米未満であれば建物があっても構わない)であることが必要です。そして例えば朽ちた家があるような場合であれば「空き家等対策の推進に関する特別措置法」に基づいて市町村が危険な空き家を除去して空き地にするという過程を経ていなければなりません。

 

利用を希望する人(事業者等含む、以下「希望者」)が実際に活用するためには、

 

(1)まず希望者自身で登記簿謄本を調べ、所有者を探します。それでも不明な場合は地域福利増進事業の準備として市町村長に対し、土地所有者に関する情報の提供を求めることができます。住民票や固定資産課税台帳の情報等のことです。

(2)都道府県知事に対する申請を行います。

(3)申請があった場合、都道府県知事が事実関係を確認した上で適切と認めた場合に公告を行い6か月の間縦覧に供します。

(4)その間に関係者の反対がなければ、都道府県知事が保証金額と使用期間(10年以内)の裁定をくだします。

(5)希望者は保証金を供託して使用権を取得します。供託額はおおよそその土地の賃料相当額となるようです。

(6)使用期間が経過したのち、事業を継続したければもう一度上記(1)〜(5)の手続きを踏んでいくことになります。事業を終了する場合は更地に戻して返還、または期間中に本来の所有者が判明してその全員が同意すればそのまま引渡しということになります。

 

手続きをざっと書くと上記のようになります。慣れないことも多いでしょうし、比較的新しい法律ですので現場では役所の担当者も勉強しながらといったこともあるようです。まずは利用しようと思っている不動産が所在する市区町村に相談されることをオススメいたします。

 

また、令和元年度5月17日に、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(令和元年法律第十五号)が成立しています。令和元年5月24日の公布から1年半以内に施行されることになっています。つまり令和2年11月24日までのいずれかの日に施行されるということです。表題部所有者不明土地とは、謄本上に氏名だけが存在していたり住所の一部だけが記載されていたりというような状況で持ち主等が不明になっているような土地のことです。不動産の現場ではわりと頻繁にみかけます。

 

この法律の十九条を読んでみると

「裁判所は、所有者等特定不能土地について、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、その申立てに係る所有者等特定不能土地を対象として、特定不能土地等管理者による管理を命ずる処分をすることができる。」

と書いてあります。

 

活用したいと思っている不動産がこの所有者特定不能土地に該当する場合、登記官が探索に必要な権限を行使して調査を行い、登記簿に反映させることができるようになりました。無事に所有者が判明した場合には、正規の所有者が保存登記を行い、一般的な不動産の案件として取引対象になります。…が、たぶん稀なのではないかと個人的に思っています。

 

大抵の場合、所有者の特定ができないことが予想されます。この場合、利害関係人の申し立てがあれば、裁判所の選任する管理者による管理ができるようになります。例えば生い茂る草木等の清掃等はこの管理者が行うことになります。また裁判所の許可があれば処分することができるようになりました。裁判所が許可をし、代金を本来の所有者のために供託するという手続きが取られることになります。

 

少しずつ不動産の利活用に関しての法律が整備されつつあります。しかし、現場から何よりも願うのは、せっかくご縁あった不動産は是非とも大切に扱っていただきたいということです。私ども不動産を生業とする者にとっては、不動産は唯一無二の存在で我が子のようなものです。色々な長所短所があるのは常でありますが、ご縁があったのであれば是非大切に管理し、最大限に有効活用する。そしてそれが難しい状況になるのであれば、売却を行い、次の奉公先を見つけてあげる。このような愛情をもって不動産を扱っていただきたいと切に願うのです。

 

府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎

 
不動産の売却、買い取りのご相談は
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大家さんが知っておくべき民法(債権法)改正

  • 2019.10.31 Thursday
  • 12:12

2020年4月1日にいよいよ改正民法が施行されます。(参考;法務省ホームページ

 

以前、本ブログにおいても売買物件における瑕疵担保責任の制度が大きく変わる旨の記事を書きました。(参考;2020年4月から不動産の「隠れた瑕疵」はなくなります)では、不動産を賃貸に出している大家さんは、今回の改正によってどのような変化が出てくるでしょうか。

 

1.賃貸保証契約の保証人について

賃貸借契約において、保証人を付けてもらうことを条件とする大家さんも多いかと思います。

 

今回の改正では、全ての個人根保証について極度額を契約書に記載しなければならないとされました。極度額とは、つまり保証金額の上限ということです。この上限金額についてはケースバイケースなのですが、ひとつの指針として国土交通省ホームページにある「極度額に関する参考資料」(リンクはこちら;PDFでダウンロードできます)を見ながら決めていくのがスタンダードになりそうです。これを見ると、例えば賃料4万円〜8万円の物件の損害額の平均は28万2千円、中央値は19万円というようなデータが出てきますので、これを基に決めていくのが良いでしょう。

 

とはいえ、私どもも含めてプロの宅建業者が保有する賃貸物件ではほとんどの場合、入居者様には指定の保証会社への加入を条件とすることでリスクヘッジをしています。最近では保証人を取るという習慣が少なくなってきたことや、外国人の入居希望者等のそもそも保証人制度では担保することが難しいケースが増えてきていますので、かわりに保証会社への加入を条件とすることで保証人の代わりを務めてもらうようにお願いしているわけです。近年では保証会社の増加による質の低下がニュースになることもありますが、国土交通省では保証会社の登録制度を創設し基準を設けることでリスクヘッジしているようです。具体的にどの保証会社を利用するのが良いかは、地域や物件の種類、契約内容によって得意とする部分が異なりますので、お近くの信頼できる宅建業者にお尋ねになられることをお勧めいたします。

 

2.契約締結時の情報提供義務

所有する不動産を店舗や事務所に貸す場合に、保証人が個人になることがあるかもしれません。この場合、改正民法465条の10では「賃借人の財産状況及び収支の状況、主たる債務意外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況、主たる債務の担保として他に提供し又は提供しようとするものがあるときはその旨及びその内容」を賃借人が保証人に伝えなければならないという義務が生じることとなりました。

 

簡単にいうとテナントさんは保証人さんに前もって「自分はこんな仕事をして、これくらいお金借りて、これくらい儲けているんだけど、保証人になってくれるかな?」と確認してくださいということです。

 

そして大家さんにとって重要なのは、大家さんは、賃借人が保証人に上記の内容を説明した上で保証人になっているかどうかを確かめておかなければ、保証人さんに「知らなかったから保証契約はなし、だから補償はしない」と言われる可能性があるということです。

 

したがって実務では今後、事業用テナントの入居者から「賃借人は民法465条の10項の1が要請する自己の財産及び収支の状況等の情報を連帯保証人に提供いたしました。連帯保証人はそれを受けて連帯保証を引き受けます。」というような一文が書かれた書面を賃貸借契約時に大家に提出いただくことになることでしょう。

 

また、保証人から「賃借人はきちんと家賃を払っていて、滞納はしていませんか?」という問い合わせがあった際には、大家は迅速に、かつ正確に回答をしなければなりません。

 

3.敷金について

改正民法622条の2で敷金について定義づけされました。また、敷金の返還をいつ行わなければならないのかも明確に定期付けされています。

 

それによると、敷金とは「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」となります。

 

そして「賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、

(1)賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の変換を受けた時

(2)賃借人が適法に賃借権を譲り渡した時

に受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない」

となっています。

 

上記(2)の「賃借人が適法に賃借権を譲り渡した時」とは、つまり大家さんの同意のもとに入居者が変わった時のことです。

 

実務でありがちなのは、「カップルで同棲していましたが、別れることになりました。契約の名義は彼氏ですが、彼女はこの家を気に入っているので住み続けたいといっています。よろしいでしょうか?」というような話です。大家さんが同意すれば「賃借権を適法に譲渡」になりますし、同意もなくいつの間にか住んでいる人が変わっていたというような場合には「無断譲渡」となり解除事由になります。

 

そしてこの適法に賃借権の譲渡が行われた場合、敷金は元の賃借人にお返しをし、新たな賃借人からは改めて敷金を頂くことになります。ここが重要なポイントです。上記の例でいうと、出ていく彼氏に敷金をお返しし、彼女から改めて敷金を頂くということです。実務では「そのまま引き継いでくれ」と言われることもあるかもしれませんが、将来「返すべき敷金を返してもらってない」と言われるリスクも残ります(本人ではなく、事情を知らない相続人が請求してくることもあります)。ですから敷金の返還も適法に行われた証拠を残しておくことがとても重要になります。

 

4.修繕義務及び費用

例えば昨今の台風や大雨のような自然災害で雨漏りしだした、窓が割れた、屋外の給湯器が壊れた等のアクシデントが起こった場合、これは契約の目的を達成できないために大家に修繕義務があるのは民法606条の1項です。改正法では「賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になった時は賃貸人に修繕義務はない」とただし書きされることになりました。そして607条の2では

「賃借物の修繕が必要である場合において

(1)賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又はその旨を知ったにも関わらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき

(2)急迫の事情があるとき

賃借人はその修繕をすることができる」

そしてその費用は608条の1項の必要費、つまり大家さんが出さないといけませんよ。というわけです。

 

大家業を営むのであれば、物件を適切に保つことは当然やらなければならない仕事です。賃借人は善良な管理者として、民法615条に明記されているように「賃貸物件に修繕箇所を発見した場合には遅滞なく賃貸人に通知」しなければなりません。しかし残念ながら全ての賃借人が善良な管理者たりえるとは限りません。実務では契約書に前もってこのような通知義務があることを記載しておく、自分の物件に起こりそうな急迫の事情を把握しておく、保険をしっかりと活用するといったリスクヘッジがとても大切になります。

 

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令和元年度宅建試験直前対策としてやるべきこと

  • 2019.10.08 Tuesday
  • 10:29

今年も、宅建試験の時期がやってきました。

今年の宅建試験は2019年10月20日(日)13:00〜(5問免除者は13:10〜)です。

受験生の皆様は直前の追い込みを頑張っておられるのではないでしょうか。

 

昨年度、平成30年の宅建試験は213,993人、合格者は33,360人、合格率は15.6%でした。

実際の申し込みは265,444人ですから、試験に当日に来られなかった方が約51,000人、これを含めて考えると、実際の合格率は12.6%といったところでしょうか。データを見ると毎年大体同じような数字で推移していることから、今年も同じような傾向になると推測できます。

 

しかし、受験者数や合格率などはどうでもよいことです。実際に受験者としてやるべきことはたったの2つです。

1.きちんと勉強し、宅建の正確な知識を身につける

2.体調管理に気を配る

この2つです。

 

1.きちんと勉強し、宅建の正確な知識を身につける

宅建試験の受験生にとって、この宅建試験というのは単なる通過点に過ぎません。宅建試験とは、受験日当日において受験生が不動産を取り扱うプロとしてのスタートラインに立つ知識と能力を有しているかどうかを判断する試験にほかならないからです。宅建試験の合格はゴールではなく、初歩の初歩、単なるスタートラインです。スタートした後は、受験のためにしたのと同じレベルの勉強を毎日積み重ねる必要があります。つまり勉強それ自体がプロフェッショナルとしての生活の一部、ルーティンになっていることが必要です。

 

したがって、試験直前だからといって特別なことをする必要はありません。今まで積み重ねてきた勉強の日々を続けていき、その途中に宅建試験というチェックポイントを通過するというだけのことです。受験生の中にはこの時期に不安を感じ、難易度の高い予想問題等に手を出す方もいらっしゃいますが、我々のような毎日不動産を取り扱う仕事をしている人間でも理解できない細かい知識等を覚える必要はありません。ひたすらに過去問の正解率を高めていくことが王道であり、最も合格率が高くなる勉強法であることは間違いありません。

 

2.体調管理に気を配る

じつはこの体調管理こそ最も重要な試験直前対策です。知識は毎日の勉強を積み重ねれば誰でも得ることができます。しかしそれを試験当日にアウトプットできるかどうかは体調に大きく左右されます。「よく問題文を読んでいれば分かったのに!」「知っていたのに思い出せなかった!」「周りが気になって集中できなかった!」こういう状況は、自分の体調が整っていない時に訪れます。

 

バランスの良い食事を摂らずに脳に糖質を含む栄養素が足りない状況では、正しく知識をアウトプットすることは難しくなります。あるいは睡眠を取らずに試験に臨めば当然、回答の正確度は落ちます。アメリカの学会誌「sleep」で発表された実験が参考になります。この実験では夜勤をする医師と夜勤がない医師をそれぞれ20名ずつのグループに分け、タブレットの画面に丸い図形がランダムに出現する画像を5分間見て、図形が出るたびにボタンを押すという誰でもできる単純な作業をさせました。夜勤がなく、きちんと睡眠を取っているグループの医師たちは、正確に反応しました。しかし夜勤明けの医師たちは90回出現する図形の内、3〜4回図形に反応することができないという結果を出してしまいました。この現象をマイクロスリープといい、脳波を見ると、1秒から10秒、脳が無意識に眠っている状況になっています(参考;「スタンフォード式最高の睡眠」西野精治著)

 

宅建試験の受験生は大抵、毎日各自の仕事を行っており、特に不動産業界で働いていると(慣習として)長時間労働や不規則な食事になりがちです。帰宅が夜遅くなることもあるでしょう。しかし、自分自身の能力を最大限に発揮することこそがプロフェッショナルとしての条件ですから、自分のコントロールできるところでは体調を万全にするための対策を取らなければなりません。例えば食事を三食きちんとバランスよく食べることや、お酒を控えること、少しの運動をすること、遅くまでスマホを見るのを止め早く寝ること、こういったことは自分自身で気を付けてコントロールできることではないでしょうか。

 

そのような毎日の積み重ねが、宅建試験と言うチェックポイントを万全な状態で通過する最も大切な対策となることは間違いありません。

 

さて、本年度令和最初の宅建試験の合格発表は令和元年12月4日(水)午前9:30です。

不動産取引のプロフェッショナルとしてスタートラインに立たれた皆様と、不動産の現場でお会いすることを楽しみにしております。

 

 

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長持ちする鉄筋コンクリート(RC)造の建物を建てるには

  • 2019.09.03 Tuesday
  • 11:57

日本では関東大震災のあった1923年以降、強度と耐久性に優れた建築として鉄筋コンクリート造が普及してきました。

 

その耐久性はやはりさすがというべきか、現在不動産の現場で取引されている建物の中には築40年50年という鉄筋コンクリート造のものがたくさんあります。

 

一方で、築年数が経過した鉄筋コンクリート造の建物の中には、内部の鉄筋が腐食しているようなものもあります。

 

コンクリートは本来、強アルカリ性です。したがって骨格たる鉄筋の表面に「不動態被膜」という被膜を作り、鉄筋が腐食したり錆びたりすることを防いでいます。

 

しかし時間の経過と共に、大気中に含まれる二酸化炭素等の影響を受けてアルカリ性だったコンクリートが徐々に中性に傾いていきます。

 

中性化すると鉄筋に表面の「不動態被膜」がなくなっていき、この被膜がなくなることによって、鉄筋が腐食したり錆びたりしていきます。

 

鉄筋が腐食したり錆びたりしていくと、鉄筋自体の体積が増えていきます。鉄筋自体の体積が増えるとその膨張によってコンクリートにひび割れが生じます。ひび割れが生じるとそこからさらに酸素や水分が入り込み、鉄筋の腐食や錆びがますます進行していきます。

 

強度と耐久性に優れた鉄筋コンクリート造の建物であっても、時間の経過と共にこのように劣化していきます。

 

では私たちが鉄筋コンクリートの建物を建てようと考えるときに、なるべく長く安全にテナントに入居していただける物件を作るためにできることとは一体何でしょうか。

 

建築基準法施行令79条には、鉄筋コンクリート造の建物の鉄筋のかぶり厚が規定されています。

 

かぶり厚とはコンクリートの表面から鉄筋の表面までの距離のことです。

 

基礎部分の鉄筋コンクリートのかぶり厚は60ミリ、耐力壁・柱・梁は30ミリ、耐力壁以外の壁や床は20ミリといったように最小距離が設定されています。

 

例えばかぶり厚を30ミリにした場合には、鉄筋の位置までコンクリートが中性化して不動態被膜をなくしてしまうようになるまで約60年であるといわれています。しかしそれをさらに10ミリ、つまり1センチ厚くするだけで、この期間は115年まで伸びます。

 

またコンクリートをひび割れしにくくするために、コンクリートの強度を上げる工夫もできます。

コンクリートは型枠に流し込んでから固まるまでの間、風雨をしのぎ、直射日光を当たらないようにし、急激な乾燥や温度変化を避けるために養生期間をとります。そしてこの養生期間が長いほどコンクリートの強度は上がり、その結果ひび割れが極端に減少することとなります。

 

専門家によるとこのコンクリートの養生期間を1〜2日長くするだけで、かなりコンクリートの強度を上げることができるそうです。鉄筋コンクリート造の賃貸ビルを建てる投資家としては、一日でも早く市場に物件を出したいという気持ちはあるかもしれませんが、1〜2日の投資でその後数十年に渡る費用の発生を抑え、安全性を高めることによる投資効率の高め方、出口でのキャピタルゲインの増やし方があるということも理解しておく必要があるかもしれません。

 

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わりと出ることがある不動産売却益と相続不動産を早く売るべき理由

  • 2019.07.15 Monday
  • 12:10

1.

不動産の処分を考え始めた時に頭をよぎるのは税金のことだと思います。

実際、売却のご相談の際に、二番目に尋ねられる質問は税金のことです(一番目は売却予想価格です)。

そして特に勘違いが多いのもこの税金のことです。

 

不動産を売却した時にかかる税金は(一般には)譲渡所得に対してのものです。つまり「不動産を買った値段より売った値段の方が高くて儲かったら税金を払ってくださいよ」ということです。

 

例えば3,000万円で買ったマンションが3,500万円で売れたというような場合には、儲かった500万円に対して課税されるというイメージです。

 

利益が出れば課税ということは、利益が出なければ課税されないということになります。仮に3,500万円で買ったマンションが3,000万円で売れたというような場合、この価格だけで見ると500万円の損ですから課税されないのではと思われるかもしれません。しかし実際には、計算をしてみないと分かりません。とはいえ、それほど難しい計算ではありません。

 

不動産売却価格ー取得費ー譲渡費用ー特別控除額=譲渡所得

 

で計算します。

 

〇不動産売却価格

不動産を売った価格です

 

〇取得費

以下を含みます

(1)土地建物そのものの購入代金

(2)購入した時に支払った仲介手数料、売買契約書に貼り付けた印紙代、登録免許税、司法書士に支払った登記手数料、そして不動産取得税

(3)増築・改築・リフォーム費用

(4)減価償却費

減価償却費ですが、

 

建物取得価格×0.9×償却率(木造;0.031、RC;0.015等)×経過年数

 

で計算します。

 

例えば10年前に新築で3,500万円でRCのマンションを買い、建物価格が2,500万円(土地1,000万円)というようなケースでは、

2,500万円×0.9×償却率0.015×10年=3,375,000円となり、3,375,000円が減価償却費(10年間で減った建物の価値)ということになります。この他に手数料等を350万円ほど支払ったと仮定すると、この場合の取得費は3,500万円から手数料350万円と建物減価償却費337.5万円を引いた28,125,000円となります。

 

〇譲渡費用

以下を含みます

(1)売却した時に支払った仲介手数料

(2)売買契約書に貼り付けた印紙代

(3)測量費

(4)登記費用

(5)借家人に立ち退いてもらうために支払った立ち退き料

(6)更地にするために支払った建物解体費用

 

例えば上述の10年前に3,500万円で買ったRCのマンションが3,000万円で売れたと考えましょう。減価償却費や手数料等を引いた物件の取得費は28,125,000円でした。そして譲渡費用として不動産仲介業者に仲介手数料1,036,800円を計上して計算してみますと

 

不動産売却価格30,000,000円ー取得費28,125,000円ー譲渡費用1,036,800円=838,200円

 

となり、3,500万円のマンションを3,000万円で売って、数字上は500万円の売却損のように見えますが、実際は838,200円の売却益が出ていることになるわけです。

 

またこのケースのように、不動産を買ったときの価格がはっきりと分かっていれば良いのですが、実際はそれが分からない場合も少なくありません。その場合は、概算取得費を使用します。概算取得費とは土地は売却価格の5%、建物は「建物の標準的な建築価額表(国税庁PDF)」を用いて計算していきます。

 

2.

さて、ここまでで取得費をいかに計上するかが節税の肝であることが理解できたのではないでしょうか。この取得費については、実は相続税が大きく絡んできます。例えば相続した不動産を相続の発生から3年10か月という期間内に売却できれば、支払った相続税を上述の取得費に加算できるのです(国税庁「相続財産取得費加算の特例」)。

 

したがって、相続に絡んで不動産を売却するのであれば、なるべくこの特例が使える期間内に売却するのが良いでしょう。

 

 

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