海外に転勤する間だけ、自宅を賃貸に出す方法

  • 2018.09.06 Thursday
  • 11:36

ご相談者は大手商社に勤められるビジネスパーソンでした。中国語が堪能で優秀なので現地企業との合弁会社設立のため、長期出張(ほぼ転勤)することになりました。今お住いの自宅は、祖父母の代から住んでいるところなので、今すぐに手放すという決断は難しいものの、ただ空き家にしておくのは、家と敷地の管理の面から好ましくないとのことで、賃貸に出すことを選択肢に入れておられました。

 

ところが色々と調べてみると「一時使用のための賃貸借」という名目で貸したにも関わらず、「一時使用のための賃貸借に該当しない」と判断されて、立ち退き料の支払いを条件に立ち退きが認められたという裁判例があることが分かり、不安に思われていたようでご相談を受ける運びとなりました。

 

ではこのようなケースの場合、自宅を賃貸に出すことは可能なのでしょうか。また、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか。

 

旧借家法においては、その第八条において「一時使用のための建物の賃貸借を為したることが明らかな場合」と書かれているものの、具体的にどのような場合に一時使用のための建物の賃貸借に該当するかについては言及していませんでした。つまり解釈にゆだねられていたわけです。

 

一方、新借地借家法においては、その第38条において、理由の必要のない一般の定期建物賃貸借を、その第39条において、取り壊し予定の建物の賃貸借をそれぞれ明記するに至りました。

 

したがって、今回のクライアントのように、(とりあえず今のところは)一時的にご自宅を賃貸に出されるというような場合には、この借地借家法第38条に則って、一般の定期建物賃貸借契約を使うことにより、将来のリスクを心配する必要がなくなります。

 

では、この定期建物賃貸借契約はどのような条件で成立するのでしょうか。同法を読んでいくと、次のことが分かります。

1.必ず公正証書による等、書面によって契約締結を行うこと

2.契約は更新がなく、期間の満了により終了することを書面を交付して説明すること

3.契約期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了についての通知をすること

 

以上の条件が、最低限必要となります。

 

一般に宅建業の免許を受けた宅建業者に媒介を依頼された場合、これらをきちんと網羅し文面にも細心の注意を払った契約書を作成し、登録を受けた宅地建物取引士が、契約の更新がない旨を書面によって説明し、賃借人による同意の印鑑をいただくことと思います。また管理を宅建業者に依頼されている場合には、契約期間の満了について十分前もって賃借人に告知するシステムが構築されていることと思います。

 

したがって、お近くの信頼できる宅建事業者にご相談になられるのが、最も良い方法です。このようなケースであっても、宅建事業者への報酬は月額賃料の50%+消費税と法令において定められていますので、万一の際の将来の立ち退きトラブルで何百万円支払うというリスクと比較しても合理的な費用かと思います。

 

しかし万一どうしても宅建業者に媒介してもらうことが難しい場合には、十分関係法令を理解し、できるだけお知り合いの弁護士、司法書士等の専門家に相談をしながら案件を進めていかれると良いでしょう。

 

楽府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎
 
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生産緑地を貸すという選択肢

  • 2018.08.25 Saturday
  • 11:36

まず、最近よく耳にする言葉「生産緑地」とは何でしょうか。

 

生産緑地とは都市部(市街化区域内)の緑地で、市町村から指定を受けた農地や採草放牧地のことをいいます。

 

敷地500平米以上、30年以上営農を継続することを条件に指定され、固定資産税が安くなる代わりに農業以外の目的に土地を使用することができなくなるというものです。

 

1972年に制定された「生産緑地法」という法律に基づいて運用されているものですが、当時、人口の増加により都市部の緑地が急激に開発されたことにより、住環境の悪化や、水害等の災害の発生が問題視されるようになり生まれた法律です。

 

そして昨今話題になっている「2022年問題」とは、1992年に改正された生産緑地法の「30年間の営農義務」の30年が経過することにより、生産緑地の指定を外すことができるようになるので、都市部の緑地が宅地となって大量に一般市場に出回るようになるのではという懸念です。つまりそこが開発されることにより、人口が減少している中でも、住宅が新築され、空き家が増え、家賃が下がり、結果不動産価格が下落していくのではないだろうかという懸念です。もちろん物事には両面がありますので、例えば家賃が下がることにより、他の消費に回せるお金が増えるという一面もあるかもしれません。あるいは、農業従事者が減少する中で、他の用途に土地が活用されることが、経済にプラスの面をもたらすという一面もあることでしょう。

 

とはいえ、国としてはやはり、都市部の土地が急激に市場に出回って経済に悪影響を及ぼすことは避けたいと考えているようです。また農業は我々人間にとっての生命の礎でもありますので、そこが少しでも維持されるようにしたいと考えているようです。

 

ところが、都市農地は土地の価格が高くなるため、それらの土地を買って農業を営んでも元を取れないという状態でした。では土地を借りて農業を行うのはどうかというと、(売買と同様に)農地法第3条による農業委員会の許可が必要、かつ(賃貸借の場合は)農地法第17条により賃貸借契約が法定更新されていくので、ほとんどの場合「農地を貸したら二度と返ってこない」という状況に陥ることになっていました。さらに、都市農地を貸した場合には、それまで猶予されていた相続税を支払う義務が生じます。当然都市農地は他の農地と比べて相続税は高くなりがちですので、こういう事情からも農地を貸すことがとても難しいという状況でした。

 

そこで平成30年6月20日、衆議院において「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」が議論され、可決成立しました。

 

この法律によると「都市農地特有の役割を果たす」事業計画を策定して、耕作を行うことにより、上述の農地法第3条、及び第17条の規定の適用除外を受けることができます。例えば生産物の一部分を地元の直売所で売ったり、子供たちを含む住民の農業体験の場、交流の場として活用したりというように、広く公に有用な土地の活用をしてくれれば、特例として農地法の適用除外としてあげますよということです。また、併せて税制改正が行われ、農地を貸したとしても、相続税の納税猶予制度を継続して受けられるようになったので、その点からも、農地の賃貸借に対するハードルはぐっと下がったといえるでしょう。

 

さて、では農地を貸す場合に、地代をどのように設定するかですが、農地を賃貸借する場合の地代については、取引事例もあまり多くありませんので、収益分析法で求めていくことになります。固定資産税・都市計画税の年額を基準にその土地固有の事情と取引当事者間の事情を勘案して設定していくのは他の土地の地代の設定と変わりません。

 

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借地・借家の立ち退き料とは〜その5〜住居として借りている側の事情〜

  • 2018.08.15 Wednesday
  • 11:36

これまで土地や建物を貸している側の事情から立ち退き料と正当事由についてみてきましたが、一方、借りている側の事情が立ち退きや立ち退き料に影響を及ぼす場合はないのでしょうか。

 

例えば住居として建物を借りていますよというような場合です。

 

まず原則として、実際に生活の本拠として建物を借りていることから、当然賃借人の必要性が強いと認められ、立ち退き料の支払いが行われるとしても、それをもって正当事由が補完されるとは認められない可能性が高くなります。

 

とはいえ、契約当初は住居として借りていた建物も、家族構成の変化によって現在は物置になっているのならばどうでしょうか。あるいは、賃借人に相続が発生して他に不動産を所有するようになっているとしたらどうでしょうか。あるいは賃借人がビジネスに成功して他に不動産を購入できるくらいの財力と信用ができたとしたらどうでしょうか。このような場合には賃借人側の必要性は低くなってきます。

 

仮に、例えば「今は物置にしているけど、また将来、住居として住もうと思っている」というような考えであったとしても、今現在の必要性としては低いわけですから、貸主(オーナー)側の今この瞬間の必要性に対して弱くなるのは仕方のないことです。

 

また昨今の社会問題ともなっている空き家の増加は、当然不動産の供給が(総数としては)過剰であることの証拠でもあるので、賃借人が代替不動産を探すことは難しいことではないと判断されるケースが増えています。したがって賃借人側の必要性としては、上述のような賃借人の財力や信用、移動の難しい年老いた両親と同居している、学校に通う子供たちがいるといったような賃借人の家族の事情、実際に賃貸借に供されている期間、というような具体的な内容を材料として総合的に判断されることが多くなります。

 

あくまでも「総合的に判断」されるので、「実際に賃貸借に供されている期間が何年以上ならOK」というようなことではありません。

 

例えば、現在の賃借人は親の代からその場所に長年住んでいるというような事情があると、町内での活動等を通して人間関係もできているでしょうし、その地域への貢献もあることでしょう。当然生活の本拠として引き続き住み続ける必要性が強くなってきます。このような場合には、いくら空き家が多い時代となってきたとはいっても「同一地域」に「同条件の代替建物」を探すということが難しいと判断されることが多く、賃借人側が保護されることが多くなります。

 

 

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「借地・借家の立ち退き料とは〜その4〜その他の貸し手の事情は正当事由になるか」

 

借地・借家の立ち退き料とは〜その4〜その他の貸し手の事情は正当事由になるか

  • 2018.08.09 Thursday
  • 18:36

前回は貸し手自身やその家族の居住の必要性が、借地・借家の立ち退きをお願いできる正当事由になるかを検討しました。

 

しかし、貸し手(≒オーナー。以下同じ)が、賃貸借関係を解消したいと思う瞬間は、自身や家族の居住の必要性だけに限りません。そのような場合にも正当事由が認められるケースはあるのでしょうか。今日はこの点を考察してみましょう。

 

1.オーナーやオーナーの家族が収益を最大化するためにその不動産を使用する必要がある場合

不動産の現場でありがちなのはやはり、賃貸中の物件を建て直し、収益を最大化しようとするケースです。

 

例えば、現在4LDKの一戸建てを貸家にして家賃を月額12万円もらっているが、最近近くに工場ができて、単身世帯が増えてきたので、1LDKを4部屋のアパートを建てれば7万円×4部屋=28万円の月額賃料になるという計算が成り立つ場合です。オーナーとしては、どうにかして現在の一戸建ての賃借人に立ち退いてもらいたいと考えるかもしれません。

 

このような場合、オーナー側のその土地の使用の必要性の程度は、かなり低いと判断されます。というのも、借りている側にとっては生活の本拠となっており、オーナーの利益のために、借りている側の生活に大きな影響を及ぼすのは公平ではないと司法は判断することが多いからです。したがって例えば貸家の契約で、当該貸家建物が老朽化していて倒壊の危険があるというような事情があるのでなければ、たとえ立ち退き料を提供しても正当事由を補完しているとは認められないことがほとんどです。

 

では、この「老朽化していて倒壊の危険がある」かどうかは、一体どのように判断されるのでしょうか。

もちろん、不動産は一つとして同じものはないので、ケースバイケースでその危険性が判断されることとなるのは大前提です。しかし例えば、建築基準法第10条には、建築物等について「損傷、腐食、その他劣化が進み、放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となる場合、特定行政庁は必要な勧告をする」と述べており、同2項、3項においては「必要な命令をする」旨述べています。

 

もしかすると、街で放置されたような空き家に、特定行政庁(市町村等)からの「この建物は危ないから、所有者や管理者はなんとかしなさい」という趣旨の勧告や命令が書かれた張り紙がされているのを見たことがあるかもしれません。

 

実際にこれらの勧告等を受けている際には、立ち退き料の支払いにより正当事由が補完されていると認められるケースが多くなっているようです。

 

2.オーナーが営業(商売)のために、不動産を使用する必要がある場合

賃貸している建物をそのまま店舗や倉庫として、あるいはその建物を取り壊して店舗を新築し、そこで商売をしようとする場合にも、オーナーには不動産自己使用の必要が認められます。オーナーがその場所で商売することに差し迫った必要性がある場合には、正当事由が強くなりがちです。とはいえ、当然賃借人側も生活の拠点としていたり、商売を行っていたりするわけですから、当然にその事情も鑑みる必要があります。賃借人側の営業の規模、どれほどの売り上げをそこで上げているのか、また同じような条件の他の物件(代替物件)をみつけることができるかどうかという必要性の程度が判断の重要な要素となります。

 

しかし現実問題「その場所で商売する差し迫った必要性」というのはなかなかレアケースですし、オーナー側が単に事業拡張のために賃借人に立ち退きを求めるとなると、司法の場における決着では、立ち退き料を支払っても正当事由が補完されていると判断されるのは難しくなるようです。

 

3.とにかく不動産を売って現金化することを急がれる場合

例えば相続が発生して、相続税の支払いは相続があったことを知った日の翌日から10か月以内という期限がありますので、それを支払うため急いで不動産を現金化しなければならないというようなことがあります。ところが、不動産が借地人がいる、借家人がいるとなると、収益評価がされることになり、今不動産が稼いでいる賃料を基準として買手は物件を評価します。例えば更地なら100万円/坪で売れる土地なのに、借地権が設定されて賃借されているので30万円/坪でしか売れないということは一般的なことです。

 

そのため、高く売るためには賃借人との契約を解除しなければならないというようなケースもあります。

 

しかしこの場合でも、オーナー側に他に処分すべき財産がないとか、収益物件として買手を探すことは非常に困難であるというような事情があるのでなければ、オーナー側の立場は非常に弱くなり、立ち退き料をもって正当事由を補完するのは困難となってきますので注意が必要です。したがってこのようなケースではたいていの場合、収益物件を買い取ることのできる、免許を受けた宅建業者に買取を依頼される方が多いようです。

 

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不動産(建物)を長持ちさせる湿度とは

  • 2018.08.08 Wednesday
  • 14:34

昔から人間は自分の住処を身近な自然に手に入るもので作ってきました。

もちろん現代に生きる私たちも、土や石、木を材料とした家に住んでいます。

 

さて、日本は(最近特に)高温多湿な気候です。また梅雨という季節を迎える国でもあります。

したがって空気中の湿度が私たち人だけでなく、建物にも影響を大きな影響を及ぼします。

 

最近では、湿度が建物に与える様々な悪影響を「湿害」という言葉で表すケースが増えてきました。

 

建物には例えば、床や柱、戸といった見える部分だけではなく、床下の束、屋根裏の梁など、色々な部分で木材が使われています。

これらの木材が湿度を含み過ぎると、木材腐朽菌が繁殖してしまい、耐久性が落ちていきます。木材腐朽菌の付着自体は何か特別な現象ではなく、炭水化物やでんぷんを栄養源とするカビの胞子が付着し、そこに木材腐朽菌が増殖して最終的にバクテリアが分解していく現象です。この木材腐朽菌の繁殖が活発になるのが、高温多湿というまさに現代日本の自然環境です。

 

そんな中、不動産を長持ちさせる目安として、建築物環境衛生管理基準が役に立ちます。

 

厚生労働省は、特定建築物(一定規模以上の店舗や事務所、旅館等)の所有者や占有者等が、その建物を建築物環境衛生管理基準により定められた一定の状態を保つように維持管理しなければならないと定めていますが、特定建築物に該当しなくても、多数の者が利用する建物はこの基準を保つよう努力しなければならないと定めています。

 

それによると、保つべき湿度は40%〜70%となっており、温度は17℃〜28℃となっています。

 

字で読むと「なるほど普通」なのですが、この条件を維持するのは意外と難しいものです。

 

例えば、今の時期(8月)ですと、まず気温が基準を超えます。ちなみに私の木造戸建ての家では外気温が35℃を超えると、エアコンをつけていない二階の室温は45℃〜50℃になっています。高温にさらされて、窓枠の木の部分がパリパリになって、木がもろくなっているのが目に見えて分かります。またRCの家は最上階では特に、コンクリートが熱を保つことからエアコンの温度をかなり低く設定しても室温が30℃より下がらないという状況になったりもします。

 

さらに雨が降ると湿度が70%を軽く超えます(木造・RCに関わらず)のでエアコンのドライ運転(除湿)を行う必要が出てきます。押入れや襖・障子などが水分を含んで開閉に障害が出たりします。当然床材や柱等にも良くありません。

 

また冬の時期になると、今度は湿度が極端に少なくなり30%に突入しますので、乾燥し過ぎて、耐久性が低くなります。したがって加湿器で湿度を高くしなければなりません。

 

この夏は、異常ともいえる暑さと湿度に私たち自身の体が悲鳴をあげていますが、同じく不動産も悲鳴をあげています。今日の私たちの身体的健康と大切な不動産の健康を保ち長生きさせるためにも、適切にエアコンを活用していくと共に、明日なるべく住みやすい環境となるように建築物や道路等の工作物も工夫が求められているようです。

 

楽府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎
 
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