相続と不動産〜その11〜相続税額の計算

  • 2019.02.28 Thursday
  • 16:16

 

相続においては、相続が発生するよりも十分前に、まだまだ元気で体も頭もしっかりと働く内に、相続財産を把握し節税できる部分は対策を施し遺言書を準備しておくことがとても大切であることは当ブログでも書いてきたとおりです。

 

この「準備」には当然、納税資金の準備も含まれます。財産を相続したものの、納税するための現金がなく、財産をたたき売らなければならなくなったり、借金をしなければならなくなったりというのでは何のための相続か分かりません。また、納税には期限というものがありますから、納税資金の準備ができなかったために納付が遅れて追徴課税というような無駄ほどもったいないものはありません。ですから、相続が発生した場合、一体どれほどの現金が納税のために必要になるのかを把握しておくことはとても大切な準備です。特に、被相続人が価値の高い不動産を所有している場合は要注意です。

 

1.基礎控除の把握

相続税の額を把握するため、一番最初にやらなければならないことが、基礎控除の額を把握することです。基礎控除とは相続財産から差し引かれる金額です。その額は2019年2月28日現在、600万円×相続人の数+3,000万円です。

 

例えば相続人が妻と子供3人で合計4人の場合、600万円×4人+3,000万円=5,400万円となります。子供3人だけが相続するというような場合だと600万円×3人+3,000万円=4,800万円ということになります。

 

 

2.相続財産の額

次に相続財産の額を把握します。預貯金や金融資産は額面もはっきりしており、特に把握に困難なことはないでしょう。問題は不動産ですが、実はそれほど難しいものではありません。

 

(1)路線価のある土地

市街地など、路線価の付けられている土地は、路線価方式によって評価されます。

国税庁のホームページの財産評価基準書<http://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm>で簡単に見ることができます。

 

地図をクリックして自分の調べたい場所を見つけると、路線価が記されています。

例えば八王子市明神町三丁目の地図を見てみると「250C」(赤丸のところ)と記載されています。

これはこの道路に面した土地が1平方メートル当たり250千円、つまり25万円であることを表わしています。「C」は借地権割合を表しています。土地が借地権の場合はCの割合、つまり70%で評価されることになります。

 

ですから仮に所有する土地が路線価25万円で、100平方メートルだとすると2,500万円で評価されるということになります。そしてさらに土地の固有の事情(角地、狭小間口、二方道路、不整形地等々)に合わせた補正率を掛けて評価額が決定します。

 

(2)路線価のない土地

固定資産税評価額×市区町村の評価倍率で把握することができます。上記の国税庁の財産評価基準書を見ると下記画像の青丸のように「倍率地域」と記されていることがあります。

このような場合には、路線価が設定されていませんので、固定資産税評価に市区町村ごとの評価倍率を掛けて把握します。市区町村の評価倍率は上記画像の左側の赤丸のところをクリックすると下の画像のように出てきますので、住所から掛率を探していきます。

 

 

(3)建物

建物は固定資産税評価額を使用します。毎年市区町村から送られてくる納税通知書に記載されている他、市区町村の役所の納税課等で「固定資産税評価証明」を取得することで把握することができます。

 

3.試算

さて、上記の評価により、相続財産の額が基礎控除額を下回った場合は、相続税の納付は必要ありません。例えば相続人が3人で基礎控除額が4,800万円で、相続財産の額が4,700万円だったというような場合です。ただし小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減等の税法上の特例を使用した結果基礎控除額を下回ったという場合は申告が必要になります。

 

では例えば、相続財産の額が1億円だったとしたらどうでしょうか。仮に相続人が妻と子供2人で基礎控除額が4,800万円だとすると、1億円-4,800万円=5,200万円が相続税の対象となる課税価格となります。

 

法定相続分通りに相続すると妻(配偶者)が2分の1の2,600万円、2人の子供たちはそれぞれ1,300万円ずつ相続することになります。

 

国税庁ホームページの税率早見表と照らし合わせてみると…

 

妻(配偶者)は2,600万円×税率15%-控除額50万円=340万円、そして子供たちはそれぞれ1,300万円×税率15%-控除額50万円=145万円ずつ納税しなければならないという計算になります。

 

したがって、この相続で支払われる相続税は合計で630万円になるわけです。現実問題として、相続財産が1億円であったとしても、現金でぽんと630万円の支払いとなるとなかなかシビアかもしれません。特に相続財産が億を超えるという場合は大抵、価値の高い土地を主とした不動産資産のことが多いことと思います。

 

また、相続人が「兄弟」の場合、相続税が2割加算されますので注意が必要です。

 

なお現在では、相続税の申告が必要かどうかについて、国税庁のホームページ「相続税の申告要否判定コーナー」<https://www.keisan.nta.go.jp/sozoku/yohihantei/top#bsctrl>で判定することができるようになっていますので、積極的に利用するのが良いでしょう。

 

いずれにしても、相続では前もって準備することがとにかく大事ですから、お近くの信頼のおける専門家とタッグを組んで進めていくことをオススメいたします。

 

府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎

 
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「相続と不動産〜その9〜期間の戦い」

「平成30年路線価が発表!どんな影響があるの?公示地価との違いとは?」

 

JUGEMテーマ:相続

相続と不動産〜その10〜被相続人が大家として不動産を賃貸していた場合

  • 2019.02.21 Thursday
  • 13:09

前記事;相続と不動産〜その9〜期間の戦い

 

見落としがちですが、相続が発生した場合に相続人に義務付けられているのは、相続税の支払いだけではありません。亡くなった方が本来支払わなければならない所得税の申告・納付をも行わなければなりません。この所得税の申告・納付を「準確定申告」といいます。

 

特に、不動産を賃貸して賃料収入を得ていた場合は必ずこの準確定申告が必要となります。その他の場合ですと、年間2,000万円を超える給与収入がある場合や個人事業主、生命保険金や損害保険金の払い戻しを受け取った場合等にも準確定申告が必要です。

 

そしてこの準確定申告なのですが、相続税の期間と異なり、相続があったことを知った日の翌日から4か月以内に行わなければならないことになっています。相続があったことを知った日の翌日から10か月ではありません。4か月です。

 

大家である被相続人の家賃収入は、亡くなった日までに支払期日が到来している部分です。例えば、毎月末に翌月分の家賃を支払うというような賃貸借契約を結んでいた場合、前月末分までが「支払い期日が到来している」部分になります。今が2月21日であれば、1月31日に受け取った2月分の家賃までが、亡くなった方の「所得」、つまり準確定申告の対象となるということです。これは所得税の部分。ちなみに相続税も、亡くなった日までに支払期日が到来している部分までが含まれることになります。仮に上と同じ契約がされていると仮定して、今が2月21日であれば、1月31日に受け取った2月分の家賃までが相続財産に含まれることになるわけです。

 

さて、それぞれの税の支払い期限までに、遺産分割協議が調えば良いのですが、前記事でも書いたように不動産が絡むと、協議が長引くことがあります。場合によっては支払い期限までに調わない場合もあるかもしれません。そのような場合は各相続人が一旦、自分の法定相続分を相続したということで申告・納税を行います。その後、遺産分割協議が調い次第、正確な相続税の納付申告を行い、追加納付をするか還付を受けるかという流れになります。

 

また相続開始後、遺産分割協議が調わない間に受け取った賃料は、それぞれの相続人がそれぞれの相続分に応じて賃料収入を得て、それぞれの相続分に応じて維持管理費を支払ったということで所得税の確定申告を行わなければなりません。最終的に賃貸不動産を相続した人が、相続開始から遺産分割協議が調うまでの間に発生した賃料を全部もらえるというわけではありませんので注意が必要です。

 

不動産の管理実務上、大家さんに相続が発生して、それぞれの相続人が「自分の口座に家賃を振り込むように」「いやいや俺に振り込むように」というような主張をしだすと、借りている人にとってはとても迷惑で不安な話になります。したがって相続が発生したのであれば必ず、いえ、相続が発生する前から、お近くの信頼のおける宅建業者に管理をお願いするべきです。

 

宅建業者へ依頼されると、まず家賃の管理と新しい体制が整うまでの維持管理が法に基づいて行われることになります。次に各相続人が、賃貸不動産の正式な相続人への権限を正式に委譲する書類の作成を行います。最後に相続人と賃借人との間で契約書を更新していきます。これによって将来に向かってトラブルをなくし、スムーズな承継が行えるようになることでしょう。

 

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「相続した不動産を遺産分割協議前に売ることができるか」

「相続と不動産〜その7〜相続人に保障された最低限の権利としての遺留分feat.平成30年度相続法改正」

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相続と不動産〜その9〜期間の戦い

  • 2019.02.14 Thursday
  • 12:15

前記事;相続と不動産〜その8〜相続税のかかる財産とは何か

 

相続は時間との勝負です。というのも、相続税の申告や納付の期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内」であるというように期間が決められているのです。

 

被相続人の財産は、医師の死亡宣告の瞬間に相続人の共有財産となります。相続税の申告や納付は、相続人全員が同意して分割の完了がなされていなければすることができません。つまり、遺産分割で争いが起きてしまえば、10か月という期間はすぐに到来することになります。その時点で「まだまとまっていないけど、とりあえず不動産を売らなきゃいけない」とやっていては、市場で売却するにはとても間に合わないというケースがでてきますので、注意が必要です。相続人が不動産価格に対して過度な期待を抱いておらず、市場の考える適正価格であれば(ここがポイントです)、すんなり現金化することはできますが、昔の良かった時期のイメージが強すぎて、自分が適正と考えている不動産価格と市場の考えている適正価格との間に乖離があれば、市場では見向きもされず、結局処分価格でバーゲンセールとなりますので注意が必要です。

 

ちなみに、申告・納付期限を守れなかった場合は延滞税が課されます。

平成31年12月31日までの期間の場合、納付期限を1日以上遅れ、2ヶ月以内に支払った場合、年2.6%の延滞税です。また2ヶ月を過ぎて支払った場合8.9%の延滞税となります。<国税庁;https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm

 

相続の際に戦わなければならない「期間」は相続税の納付期限だけではありません。

相続をするのか、それともしないのか、そしてどのような形で相続するのか、これらを決定するのにも期限があります。

 

相続には三種類の方法があります。不動産、現預金、有価証券等のプラスの財産と借金等のマイナスの財産のいずれもひっくるめて全て相続することを「単純承認」といいます。

 

逆に全く相続しないことを「相続放棄」といいます。相続放棄をするためには家庭裁判所に相続放棄の申し立てをしなければなりません。その手続きは相続開始から3か月以内に行わなければならないという期限が定められています。その間に手続きを行わなかった場合、自動的に「単純承認」を選んだとみなされます。現実問題として、相続が発生して49日があって、親戚で集まって、財産を全部集めて、それぞれをどう分けるか決めてというのはなかなか骨の折れる作業です。特に不動産に関しては意見の割れやすいところがあります。不動産を保有しておきたい人と、保有したいとは思わない人がいるでしょうし、仮に保有することでまとまっても、では具体的に誰が責任をもって管理運営していくのか、リスクは誰が背負うのかといったことまできちんと決めなければなりません。

 

なお相続放棄は相続人それぞれの判断でするかしないかを決めることができます。しかしいったん相続放棄を行うと、変更できませんので注意が必要です。

 

そして三種類目の相続の手段は「限定承認」です。プラスの財産の範囲内であればマイナスの財産も相続するというものです。つまり負債が上回った部分については相続しないということです。しかしこの方法は相続人全員の合意による必要があります。ですから一人でも反対する相続人がいる場合は使うことができない方法です。この方法も「相続放棄」と同じく、相続が発生した日から3か月以内に、家庭裁判所に申し立てを行ってすることができます。

 

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「相続と不動産〜その5〜相続できる人と相続できる額」

 

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相続と不動産〜その8〜相続税のかかる財産とは何か

  • 2019.02.07 Thursday
  • 18:17

前記事;相続と不動産〜その7〜相続人に保障された最低限の権利としての遺留分feat.平成30年度相続法改正

 

さて相続が発生した際に、最も頭を悩ませるのが相続税ではないでしょうか。

相続税の申告は、相続が発生したことを知った日の翌日から10月以内に行わなければなりません。

 

では相続税は、どの財産にかかってくるのでしょうか。

 

主だったところでは現金・預金、土地・建物、有価証券、債券、著作権、貴金属等、換金できるものはほとんど課税対象になります。

土地・建物つまり不動産にかかる相続税でいうと『「借地権」は借りているもので、自分の所有ではないので財産ではないですよね?』というご質問をいただくことがあります。しかし、借地権は相続財産です。

 

地主さんから土地を借りて、その上に家を建てて住んでいるというケースはよくあります。家は、物理的にも権利的にも土地と一体となってやっと家となります(不可分性)。したがって相続で家も相続するのであれば、その家が建っている根拠となる権利、つまりこの場合であれば「借地権」も相続することになります。また上述のように、借地権は売買の対象となり換金できるものです。ということで借地権は相続財産ということになり、相続する際には相続税が課税されます。

 

借地権は契約して土地を借りているものです。契約の内容にもよりますが、一般的な借地権の場合(=定期借地権等でない場合)、借地人はほぼ半永久的に土地を使用収益することができます。それはつまり土地の本来の所有者である地主が半永久的にその土地を使用収益できないという意味でもあります。したがって、所有権としての評価よりも借地権としての評価のほうが高いケースがあります。

 

また現場でよくあるのは、昭和の中期〜後期の時期に借地権を設定して土地を借りて家を建て、時代の移り変わりとともに周囲の環境が変化して、土地の価格自体がかなり高くなっているというケースです。

 

例えば借地契約は昔々で地主さんも地元の名士で裕福、昔からの付き合いなので地代は毎月数万円しか払っていない、家は被相続人である父が建てた古いものなので固定資産税も当然格安…「ウチは財産なんてないから」というようなケースで、実はその借地権の課税台帳価格は億を超えており、基層控除等を引いて税率を掛けて、相続税額は一千万円を超えるというようなことがあります。

 

ですから「ウチは財産とか持っていないから」と思っていても油断大敵なのです。

 

どのような場合でも、できるだけ前もって相続される財産をリストアップして整理し、節税対策できる部分は対策し、不動産のように価格の上下する財産は出口戦略をきっちりと練って計画的に実行していくことがとても大切です。

 

 

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「相続と不動産〜その6〜法的に有効な自筆証書遺言の書き方feat.平成30年度相続法改正」

 

 

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相続と不動産〜その7〜相続人に保障された最低限の権利としての遺留分feat.平成30年度相続法改正

  • 2019.01.31 Thursday
  • 00:00

前記事;相続と不動産〜その6〜法的に有効な自筆証書遺言の書き方feat.平成30年度相続法改正

 

前記事では、相続が争族にならないために、また相続人の意思をできるだけ反映させるために、十分前もって遺言書を準備しておくことが大切であることを取り上げました。

 

さて、法的に有効な遺言書ができ、相続人側もその遺言に納得がいけば万事OKでしょう。しかし相続人側が納得いかない遺言書の内容であった場合は一体どうなるのでしょうか。

 

例えば「俺は愛人の〇〇と会って本当の愛というものを知った。だから財産は全て愛人の〇〇に相続させる」という法的にバッチリ有効な遺言書があった場合(実話)。お互いに思うところはあるにせよ、相続人側としては「意義あり!」と言いたい事情もあるかもしれません。

 

またここまで極端な例ではないにしても、例えば、相続人が子供たちで、一方は実家に住んで毎日生活面での面倒を見ていて、もう一方は遠方に働きに出てお金を家庭に入れることで経済的に面倒を見ていたというような状況で、どちらか一方にのみ財産を相続させるという遺言であった場合、やはり不公平感を感じずにはいられない相続人も出てくる可能性が高いわけです。

 

そこで民法は、その1028条から1044条に、相続人の権利を守るものとして「遺留分(いりゅうぶん)」というものを設定し、その詳細を細かく規定しています。

 

それによると、財産が遺贈や生前贈与されても、配偶者、子(又は代襲相続人)、直系尊属(親など)は「遺留分」として一定の相続分を確保することができるとされています。なお法定相続人の順位で第三順位である兄弟・姉妹は含まれていないことに留意しなければなりません。

 

またそれぞれの「一定の相続分」とは、直系尊属のみが相続人である場合は被相続人の財産の3分の1。それ以外の場合は被相続人の財産の2分の1とされています。ですから例えば、愛人に1億円の財産を相続するという内容の遺言書があっても、奥さんと子供は遺留分を請求することにより5千万円を自分たちのために確保し、それをそれぞれで分かち合うというようなことができるということになります。

 

この遺留分を請求する権利のことを「遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげいさいせいきゅうけん)」と言います。

 

基本的に民法では「相続財産はそれを築き上げた被相続人のものだよね。まあもちろんその過程においては大なり小なり相続人の助力もあっただろうけどね」というようなスタンスですから、この遺留分減殺請求は自動的に発動するわけではなく、あくまでも権利として存在するよということなのです。それゆえ権利を行使するかどうかを法定相続人が決めなければなりません。つまり遺留分減殺請求をしても良いし、しなくても良いというわけです。

 

しかし請求するのであれば、民法第1042条にあるように「相続の開始、及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから一年以内」にしなければなりません。この期間内に行使しなかった場合や、相続開始から10年を経過した時にも同じように時効により消滅します。

 

またこの権利は放棄することもできます。被相続人が生存している段階であれば、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に遺留分の放棄の申し立てを行い、家庭裁判所の許可を得ることで行うことができます。裁判所が許可をするかどうかは、どのような事情で遺留分の放棄を行っているのかという個別具体的な内容を裁判官が斟酌して決まります。日頃の行いはとても大切です。また遺留分を放棄した側にとって不公平でないかどうか(例えば遺留分を放棄する代わりにある程度の金銭を与えることで公平性を担保しているか)をみているようです。もちろん被相続人が亡くなり、実際に相続が発生したのであれば自由に遺留分を放棄することができます。また法定相続人の一人が遺留分を放棄したからといって、他の法定相続人の遺留分が増えるわけではないことにも留意が必要です。

 

さて、実はここからが本題です。この遺留分減殺請求ですが、不動産の現場ではとても困ったことが起きていました。遺留分の侵害の対象が不動産である場合です。

 

例えば1億円のマンションが相続財産であり、法定相続人の遺留分が5千万円だとすると、このマンションは、遺言により相続した人と遺留分減殺請求により相続した法定相続人の共有ということになってしまいます。となると、民法の共有のルールに則り、不動産は自由に処分できませんし、運営管理にもいちいち同意が必要となります。一方はお金がかかろうと大規模修繕はきちんとやりたい、しかしもう一方は古い建物の大規模修繕などお金の無駄と考えているといったような意見の相違があれば、結局何も進まず不動産は朽ちていくということになります。実際に多いケースです。

 

そこで平成30年度の相続法の改正では、「遺留分侵害額の請求」ができるようになりました(平成31年7月施行)。参考;法務省ホームページ「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について」

 

これは遺留分を金銭債権として請求する権利です。つまり今後は、遺留分は金銭でしか請求できなくなるということです。これにより上記のような不運な共有やトラブルを避け、例えば「不動産は〇〇に譲りたい」「経営する会社は〇〇に譲りたい」というような被相続人の意思を尊重したうえで、できるだけ多くの人が納得いく相続の形を作ろうとしているのです。

 

これにより遺留分侵害額の請求をされた側は、金銭債務を負う、つまり金銭により補償を行う必要があります。補償分の金銭が用意できない場合には、裁判所に対し、金銭債権の全部又は一部に関して、期限の許与を求めることになります。場合によっては不動産の売却や有効活用により現金を作り出す必要があることでしょう。その際にはいつ売れるか分からない一般市場での売却というよりも、買取を行う宅建業者等への売却が有効な選択肢となるかもしれません。

 

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