相続と不動産〜その6〜法的に有効な自筆証書遺言の書き方feat.平成30年度相続法改正

  • 2019.01.24 Thursday
  • 11:35

 

さて、相続が争族にならないために、一番必要なことは一体何でしょうか。

普段から常に仲良く、相手を気遣うこと、敬うこと…もちろんこれらもとても大切なのですが、やはり家族や親族といえど日々色々な状況に直面して状況や考え方は変化していくものです。

 

相続をきっかけとした不動産の取引の現場では、相続を円満に解決させ、家族が末永く仲良くやっていくための一番の秘訣は、十分前もって遺言書が準備されていることだと感じます。

 

「遺言書とかなくても、うちは(仲が良いから)財産の分配でもめないよ」

「遺言書とかなくても、うちはもめるような財産がないよ」

 

このような気持ちは大変よく分かります。その根底には、もちろん「家族仲良くやってほしい」という気持ちだけでなく、いつかは自分に訪れると頭では理解している「死」を現実のものとして捉えられない、捉えたくないという気持ちが多分にあるように感じます。

 

「まだ大丈夫」

 

こう思っている時が、実は肉体的にも精神的にも、準備のための最適な時期となります。慌てて行う対策には、必ずトラブルがついてくるものです。したがって、きちんと準備をしてから、ゆっくり長生きしていただくのが良いかと思います。

 

では賢明にも、家族の将来の安定と平和のために遺言書を書こうと思った場合、次に考えるのはどのように書けば法的に有効な遺言書となるのかという点です。もちろん税理士や司法書士等の専門家に頼んで法的に有効な遺言書を整備してもらうことはできます。ただしもちろんそれなりに費用がかかります。

 

また、まだまだ人生は長いので自分の財産状況や家族関係に変化が訪れる可能性もあります。例えば、孫が生まれて目の中に入れても痛くない。かわいくて仕方ない。もうこの子に全てを捧げたいというような気持ちの変化があるかもしれません。変化がある度に専門家に頼んで費用を払って遺言書を作成するというのは現実的でない場合もあるでしょう。

 

このような場合に、よく使われるのが「自筆証書遺言」という形です。

 

自筆証書遺言は、文字通り自筆で書かれた遺言書です。ただし専門家に依頼しているわけではありませんので、その遺言書に法的な有効性をもたせるためには、次の条件を必ず満たしていなければなりません。

 

(1)全文自筆であること

自筆証書遺言を法的に有効な遺言書とするためには、*全文を自筆で書く必要があります。ワープロやパソコンで書かれたものは認められません。*なお、平成30年度7月の相続法改正により、自筆証書遺言に添付する「財産目録」の作成はワープロやパソコンでも可能になりました。したがって、自筆で、例えば「別紙目録一及び二の不動産を、長男である不動産多に相続させる」のように書き、パソコンで作った「別紙目録」を添付するというようなことができるようになったわけです。

 

(2)ボールペンなど、消せない筆記具を使用すること

鉛筆やシャープペンではだめです。

 

(3)表題に「遺言書」とはっきり明記すること

この表記がなければ、本人は遺言書のつもりで書いていても、他人には単なる財産配分の案を書いたメモ書きに見えるかもしれません(という主張をさせるスキを与えてはいけません)。きちんと「遺言書」である旨明記します。

 

(4)相続人について間違いなく特定できるように書くこと

同姓同名の親族はいませんか?混同のないように戸籍謄本等を参考にしながら丁寧に記載していきましょう。生年月日や被相続人との関係を明記するのが良いでしょう。

 

(5)相続財産について間違いなく特定できるように書くこと

不動産は「土地」と「建物」で別物です。ですから「〇〇の家」といったざっくりとした表記では不十分です。「東京都八王子市〇〇町△丁目□番地□号の土地 △△平米」「東京都八王子市〇〇町△丁目□番地□号の家屋番号〇〇番△号の建物」というように丁寧に書きます。法務局の登記事項証明書を取り寄せて一件ずつ丁寧に書きます。なお、上述のように、平成30年度の相続法改正により相続財産については別紙で財産目録をパソコン等で作成して、自筆証書遺言に添付することが可能になりましたので、作成しておくと便利です。ただしパソコンで作った別紙目録にも全てのページに自筆での署名押印をしておくことをお忘れなく。

 

(6)各相続人それぞれの取り分を分かりやすく明確に書くこと

「下記不動産について、被相続人の妻不動産子に相続させる

【土地】

所在

  東京都新宿区西新宿一丁目

地番

  〇番□

地目

  宅地

地積

  〇〇.□□平方メートル

以上、計一筆

 

【建物】

所在

  東京都新宿区西新宿一丁目〇番□

家屋番号

  〇番□-△

種類

  居宅

構造

  木造スレート葺2階建

床面積

  1階〇〇.△□平方メートル

  2階〇〇.△□平方メートル

以上、計一棟」

 

「下記の預貯金は長男不動産男に相続させる」

  〇〇銀行 □□支店

  普通預金 口座番号1234567

  口座名義人 不動 産太郎」

 

(7)遺言執行者を指定する

遺言書の内容が、間違いなく執行されるための統括責任者を指定しなければなりません。税理士や司法書士、弁護士等、また信頼できる知人の社長等を指名される方が多いようです。

 

(8)作成年月日を記入して署名・捺印を行う

自筆証書遺言は、いつでも任意の時に新しい遺言書を書くことができます。複数遺言書が発見された場合には、日付が最新のものが有効とされます。また認知機能の低下等で責任能力の問題が生じた場合に、遺言書の作成年月日の時点においての責任能力がどうだったのかといった判定がなされるため大変重要なポイントとなります。自身の署名・押印と共に、忘れずに記載しましょう。

 

(9)封筒に入れ、封をして押印する

 

このように作成した遺言書は、分かりやすい場所に保管しなければなりません。しかし今まで、自筆証書遺言は自宅の押し入れ奥深くに保管されたり、金庫や仏壇に保管されたりすることが多く、忘れ去られたり、無くしたり、書き替えられたりするリスクがありました。平成30年度の相続法改正では、こうしたリスクを避けるために、法務局で保管する制度が創設されることとなりました。法務局では原本を保管し、また画像データとして自筆証書遺言を残すことになります。そして実際に相続が発生すると、相続人は遺言書の写しの請求・閲覧が可能になるとともに、請求閲覧があったことが他の相続人にも通知されるという仕組みになります。

 

最後に、実際に相続が発生した場合、遺言書は家族で開封して中身を確認するのではありません。自宅等で遺言書を保管していた場合には、遺言書が法的に有効かどうかを家庭裁判所がチェックする「検認」という手続きを経なければなりません。検認申し立ては、遺言書を保管していた人(上記「遺言執行者」等、または遺言書を発見した相続人が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。この検認において改定裁判所が「問題なし」と認めれば、自筆証書遺言はようやく効力をもつことになり、執行されることになります。上述の法務局による保管を行っていた場合、この検認の手続きが不要なため、時間や手間といった面でも大変なメリットがあるといえます。

 

なお、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所について、被相続人の最後の住所地が海外である場合もあることと思います。この場合、被相続人の日本国内における最後の住所地が基準となります。また被相続人が一度も日本国内に住所をもたなかった場合には東京地方裁判所が管轄となるようです。

 

 

府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎

 
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