相続と不動産〜その7〜相続人に保障された最低限の権利としての遺留分feat.平成30年度相続法改正

  • 2019.01.31 Thursday
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前記事;相続と不動産〜その6〜法的に有効な自筆証書遺言の書き方feat.平成30年度相続法改正

 

前記事では、相続が争族にならないために、また相続人の意思をできるだけ反映させるために、十分前もって遺言書を準備しておくことが大切であることを取り上げました。

 

さて、法的に有効な遺言書ができ、相続人側もその遺言に納得がいけば万事OKでしょう。しかし相続人側が納得いかない遺言書の内容であった場合は一体どうなるのでしょうか。

 

例えば「俺は愛人の〇〇と会って本当の愛というものを知った。だから財産は全て愛人の〇〇に相続させる」という法的にバッチリ有効な遺言書があった場合(実話)。お互いに思うところはあるにせよ、相続人側としては「意義あり!」と言いたい事情もあるかもしれません。

 

またここまで極端な例ではないにしても、例えば、相続人が子供たちで、一方は実家に住んで毎日生活面での面倒を見ていて、もう一方は遠方に働きに出てお金を家庭に入れることで経済的に面倒を見ていたというような状況で、どちらか一方にのみ財産を相続させるという遺言であった場合、やはり不公平感を感じずにはいられない相続人も出てくる可能性が高いわけです。

 

そこで民法は、その1028条から1044条に、相続人の権利を守るものとして「遺留分(いりゅうぶん)」というものを設定し、その詳細を細かく規定しています。

 

それによると、財産が遺贈や生前贈与されても、配偶者、子(又は代襲相続人)、直系尊属(親など)は「遺留分」として一定の相続分を確保することができるとされています。なお法定相続人の順位で第三順位である兄弟・姉妹は含まれていないことに留意しなければなりません。

 

またそれぞれの「一定の相続分」とは、直系尊属のみが相続人である場合は被相続人の財産の3分の1。それ以外の場合は被相続人の財産の2分の1とされています。ですから例えば、愛人に1億円の財産を相続するという内容の遺言書があっても、奥さんと子供は遺留分を請求することにより5千万円を自分たちのために確保し、それをそれぞれで分かち合うというようなことができるということになります。

 

この遺留分を請求する権利のことを「遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげいさいせいきゅうけん)」と言います。

 

基本的に民法では「相続財産はそれを築き上げた被相続人のものだよね。まあもちろんその過程においては大なり小なり相続人の助力もあっただろうけどね」というようなスタンスですから、この遺留分減殺請求は自動的に発動するわけではなく、あくまでも権利として存在するよということなのです。それゆえ権利を行使するかどうかを法定相続人が決めなければなりません。つまり遺留分減殺請求をしても良いし、しなくても良いというわけです。

 

しかし請求するのであれば、民法第1042条にあるように「相続の開始、及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから一年以内」にしなければなりません。この期間内に行使しなかった場合や、相続開始から10年を経過した時にも同じように時効により消滅します。

 

またこの権利は放棄することもできます。被相続人が生存している段階であれば、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に遺留分の放棄の申し立てを行い、家庭裁判所の許可を得ることで行うことができます。裁判所が許可をするかどうかは、どのような事情で遺留分の放棄を行っているのかという個別具体的な内容を裁判官が斟酌して決まります。日頃の行いはとても大切です。また遺留分を放棄した側にとって不公平でないかどうか(例えば遺留分を放棄する代わりにある程度の金銭を与えることで公平性を担保しているか)をみているようです。もちろん被相続人が亡くなり、実際に相続が発生したのであれば自由に遺留分を放棄することができます。また法定相続人の一人が遺留分を放棄したからといって、他の法定相続人の遺留分が増えるわけではないことにも留意が必要です。

 

さて、実はここからが本題です。この遺留分減殺請求ですが、不動産の現場ではとても困ったことが起きていました。遺留分の侵害の対象が不動産である場合です。

 

例えば1億円のマンションが相続財産であり、法定相続人の遺留分が5千万円だとすると、このマンションは、遺言により相続した人と遺留分減殺請求により相続した法定相続人の共有ということになってしまいます。となると、民法の共有のルールに則り、不動産は自由に処分できませんし、運営管理にもいちいち同意が必要となります。一方はお金がかかろうと大規模修繕はきちんとやりたい、しかしもう一方は古い建物の大規模修繕などお金の無駄と考えているといったような意見の相違があれば、結局何も進まず不動産は朽ちていくということになります。実際に多いケースです。

 

そこで平成30年度の相続法の改正では、「遺留分侵害額の請求」ができるようになりました(平成31年7月施行)。参考;法務省ホームページ「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について」

 

これは遺留分を金銭債権として請求する権利です。つまり今後は、遺留分は金銭でしか請求できなくなるということです。これにより上記のような不運な共有やトラブルを避け、例えば「不動産は〇〇に譲りたい」「経営する会社は〇〇に譲りたい」というような被相続人の意思を尊重したうえで、できるだけ多くの人が納得いく相続の形を作ろうとしているのです。

 

これにより遺留分侵害額の請求をされた側は、金銭債務を負う、つまり金銭により補償を行う必要があります。補償分の金銭が用意できない場合には、裁判所に対し、金銭債権の全部又は一部に関して、期限の許与を求めることになります。場合によっては不動産の売却や有効活用により現金を作り出す必要があることでしょう。その際にはいつ売れるか分からない一般市場での売却というよりも、買取を行う宅建業者等への売却が有効な選択肢となるかもしれません。

 

府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎

 
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