相続と不動産〜その14〜相続放棄しても不動産を放棄したことにはなりません

  • 2019.07.08 Monday
  • 12:29

2025年に、団塊世代が75歳以上となります。私たちの住んでいる近所を見渡してみると、現在高齢者のみでお住まいになられている家がいくつもあることに気づくのではないでしょうか。これらは空き家予備軍となります。

 

日本では持ち家政策の下、子供たち世代の住宅取得が推進されてきました。そうなると当然、親世代とは別の家にそれぞれの生活をするようになります。そして相続が発生しても移転登記も行われず、売却されることもなく、空き家は空き家のままで放置されるケースが増えてきました。それは経済が縮小していって土地の価格が下がった中で、売ったとしても売却益どころかマイナスが発生してしまったり、そもそも今の時代には誰も欲しがらない売却の難しい物件であったり、あるいは単純に面倒くさいというような事情があるからです。

 

さて、不動産の現場で客と話していると、そのような問題への解決策として「相続放棄」という手段を検討している方が多いことに気づきます。相続放棄とは、まさに被相続人の財産を相続することを放棄することを指します。地方に親が住んでいた不動産が空き家で置いてあるけど、めんどくさいし、売れないし、貸せないし、売る(貸す)にしてもかなり高い費用をかけて解体なりリフォームなりしないといけないし…etcというような事情で、どこからか「相続放棄」という言葉を覚えてきて、財産を一切相続しない代わりに、めんどくさい不動産の処分からも逃れようという考え方です。

 

しかし実際にはそんな甘い話はありません。

 

1.不動産の所有権は、別の誰かに移るまで管理責任は残ります

民法第940条にははっきりと「相続の放棄をしたものは、その放棄によって相続人となったものが相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」と書かれています。

 

したがって、例えば戸建てを放置していて、その戸建てからの飛来物や落下物が、他人や他人の財産に損害を与えた場合、相続放棄を選択していたとしても、当然管理者責任を問われることになります。あるいはマンションを放置していて、管理が不十分なせいで水漏れが発生したりといったようなことがあると、当然その被害については賠償を求められることがあるわけです。

 

それならばと相続財産管理人を選任することを思いつくかもしれませんが、当然その相続財産管理人の費用が発生します。またその費用は相続財産から支払われ、足りない場合は申立人が支払うことになります。

 

つまり、不動産のめんどくさい管理・処分から解放されるために相続放棄を選択したとしても、次の所有者が正式に決まるまでは管理責任は付いて回りますし、不動産を相続することに伴う経済的な負担から逃れるために相続放棄をしたのに、費用はかかることになるということです。

 

2.国はほとんどの場合、相続放棄された不動産を引き取ったりしません

相続放棄された財産は、次順位の相続人に相続権が移ることになりますが、相続財産管理人を選任した場合、相続財産管理人は不動産も含む全相続財産をひっくるめて清算し残った財産を国庫に引き継ぐことになります。しかし、国としても相続放棄されたどうしようもない不動産を引き取るわけにはいきません。広く多くの国民の税金で運営されている以上当然の選択です。したがって、いつまで経っても相続財産の清算が終わらないことになります。そして相続財産管理人の費用は(相続放棄を選択して難を逃れたと思っていた)申立人が支払い続けることになります。

 

費用の大小という意味では当然、素直に相続して、自分で管理していた方が安くなることは言うまでもありません。またその方が処分も自由にすることができるということになります。

 

よって、もしあなたが自分の財産を誰かに引き継がなければならないと考えているのならば、なるべく早く、元気なうちに、財産の整理をしておくのが賢明な選択でしょう。「なんとかなるだろ」では子孫が困ることが多いのです。

 

またもしあなたが誰かの財産を引き受けなければならない立場にあるのならば、現在の所有者が元気な内に、財産の整理をするよう背中を押し、そしてお手伝いすることが賢明でしょう。不動産の資料を集めることや、境界の確認、道路の権利関係を整理するといった作業は、慣れないとなかなかハードルの高い仕事です。

 

いずれにしても「相続放棄するから大丈夫」というような選択は、決して問題の解決とはならない選択であることを覚えておく必要があります。

 

 

府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎

 
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