大家さんが知っておくべき民法(債権法)改正

  • 2019.10.31 Thursday
  • 12:12

2020年4月1日にいよいよ改正民法が施行されます。(参考;法務省ホームページ

 

以前、本ブログにおいても売買物件における瑕疵担保責任の制度が大きく変わる旨の記事を書きました。(参考;2020年4月から不動産の「隠れた瑕疵」はなくなります)では、不動産を賃貸に出している大家さんは、今回の改正によってどのような変化が出てくるでしょうか。

 

1.賃貸保証契約の保証人について

賃貸借契約において、保証人を付けてもらうことを条件とする大家さんも多いかと思います。

 

今回の改正では、全ての個人根保証について極度額を契約書に記載しなければならないとされました。極度額とは、つまり保証金額の上限ということです。この上限金額についてはケースバイケースなのですが、ひとつの指針として国土交通省ホームページにある「極度額に関する参考資料」(リンクはこちら;PDFでダウンロードできます)を見ながら決めていくのがスタンダードになりそうです。これを見ると、例えば賃料4万円〜8万円の物件の損害額の平均は28万2千円、中央値は19万円というようなデータが出てきますので、これを基に決めていくのが良いでしょう。

 

とはいえ、私どもも含めてプロの宅建業者が保有する賃貸物件ではほとんどの場合、入居者様には指定の保証会社への加入を条件とすることでリスクヘッジをしています。最近では保証人を取るという習慣が少なくなってきたことや、外国人の入居希望者等のそもそも保証人制度では担保することが難しいケースが増えてきていますので、かわりに保証会社への加入を条件とすることで保証人の代わりを務めてもらうようにお願いしているわけです。近年では保証会社の増加による質の低下がニュースになることもありますが、国土交通省では保証会社の登録制度を創設し基準を設けることでリスクヘッジしているようです。具体的にどの保証会社を利用するのが良いかは、地域や物件の種類、契約内容によって得意とする部分が異なりますので、お近くの信頼できる宅建業者にお尋ねになられることをお勧めいたします。

 

2.契約締結時の情報提供義務

所有する不動産を店舗や事務所に貸す場合に、保証人が個人になることがあるかもしれません。この場合、改正民法465条の10では「賃借人の財産状況及び収支の状況、主たる債務意外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況、主たる債務の担保として他に提供し又は提供しようとするものがあるときはその旨及びその内容」を賃借人が保証人に伝えなければならないという義務が生じることとなりました。

 

簡単にいうとテナントさんは保証人さんに前もって「自分はこんな仕事をして、これくらいお金借りて、これくらい儲けているんだけど、保証人になってくれるかな?」と確認してくださいということです。

 

そして大家さんにとって重要なのは、大家さんは、賃借人が保証人に上記の内容を説明した上で保証人になっているかどうかを確かめておかなければ、保証人さんに「知らなかったから保証契約はなし、だから補償はしない」と言われる可能性があるということです。

 

したがって実務では今後、事業用テナントの入居者から「賃借人は民法465条の10項の1が要請する自己の財産及び収支の状況等の情報を連帯保証人に提供いたしました。連帯保証人はそれを受けて連帯保証を引き受けます。」というような一文が書かれた書面を賃貸借契約時に大家に提出いただくことになることでしょう。

 

また、保証人から「賃借人はきちんと家賃を払っていて、滞納はしていませんか?」という問い合わせがあった際には、大家は迅速に、かつ正確に回答をしなければなりません。

 

3.敷金について

改正民法622条の2で敷金について定義づけされました。また、敷金の返還をいつ行わなければならないのかも明確に定期付けされています。

 

それによると、敷金とは「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」となります。

 

そして「賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、

(1)賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の変換を受けた時

(2)賃借人が適法に賃借権を譲り渡した時

に受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない」

となっています。

 

上記(2)の「賃借人が適法に賃借権を譲り渡した時」とは、つまり大家さんの同意のもとに入居者が変わった時のことです。

 

実務でありがちなのは、「カップルで同棲していましたが、別れることになりました。契約の名義は彼氏ですが、彼女はこの家を気に入っているので住み続けたいといっています。よろしいでしょうか?」というような話です。大家さんが同意すれば「賃借権を適法に譲渡」になりますし、同意もなくいつの間にか住んでいる人が変わっていたというような場合には「無断譲渡」となり解除事由になります。

 

そしてこの適法に賃借権の譲渡が行われた場合、敷金は元の賃借人にお返しをし、新たな賃借人からは改めて敷金を頂くことになります。ここが重要なポイントです。上記の例でいうと、出ていく彼氏に敷金をお返しし、彼女から改めて敷金を頂くということです。実務では「そのまま引き継いでくれ」と言われることもあるかもしれませんが、将来「返すべき敷金を返してもらってない」と言われるリスクも残ります(本人ではなく、事情を知らない相続人が請求してくることもあります)。ですから敷金の返還も適法に行われた証拠を残しておくことがとても重要になります。

 

4.修繕義務及び費用

例えば昨今の台風や大雨のような自然災害で雨漏りしだした、窓が割れた、屋外の給湯器が壊れた等のアクシデントが起こった場合、これは契約の目的を達成できないために大家に修繕義務があるのは民法606条の1項です。改正法では「賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になった時は賃貸人に修繕義務はない」とただし書きされることになりました。そして607条の2では

「賃借物の修繕が必要である場合において

(1)賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又はその旨を知ったにも関わらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき

(2)急迫の事情があるとき

賃借人はその修繕をすることができる」

そしてその費用は608条の1項の必要費、つまり大家さんが出さないといけませんよ。というわけです。

 

大家業を営むのであれば、物件を適切に保つことは当然やらなければならない仕事です。賃借人は善良な管理者として、民法615条に明記されているように「賃貸物件に修繕箇所を発見した場合には遅滞なく賃貸人に通知」しなければなりません。しかし残念ながら全ての賃借人が善良な管理者たりえるとは限りません。実務では契約書に前もってこのような通知義務があることを記載しておく、自分の物件に起こりそうな急迫の事情を把握しておく、保険をしっかりと活用するといったリスクヘッジがとても大切になります。

 

府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎

 
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