現在の入居者に立ち退いてもらうことを前提に不動産を売却や買取する場合の注意点とは

  • 2018.07.21 Saturday
  • 14:36

建物が築30年、40年、50年と年数を重ねていくと当然劣化も生じてきますし、近隣の環境も大きく変わり、土地が最有効使用できていないという状況になることはよくあることです。

 

例えば50年前は近所の住民がちょっとした食料や日用品を買いに来るのにぴったりだった、駅前の商店街の小さな店舗は、コンビニエンスストアや郊外の大型スーパーにその役割を譲り渡し、現在ではむしろ駅近のマンションとしての用途が求められるようになっているかもしれません。あるいは、大学や工場が移転し、アパートの需要が無くなり、むしろ戸建ての住宅用地としての用途を求められるようになっているかもしれません。

 

しかし不動産は、その求められる用途が変化したからといって、急激に形を変えることはできないという特徴があります。それは不動産が仕事や生活の本拠として活用されるという性質をもっているからです。上述のような小さな店舗であっても、高齢の店主の生活の糧を得る場所だったり、生活それ自体の場所だったりすることでしょう。またアパートの需要が無くなり、戸建ての住宅用地としての需要が高まっていたとしても、現在アパートに住んでいる人にとっては生活の本拠であり、今すぐに戸建てに建て替えるというのは無理な話となります。

 

とはいえ不動産、特に建物が経年劣化を生じる物質である以上、入居者がいたとしてもやはりどこかのタイミングで、土地の用途の変更や建物の建て替えが必要になるのは事実です。また不動産の売り買いのタイミングで「現在の入居者が退去すること」を条件に売買契約が行われることも当然出てくるわけです。ではこのような場合、どのような点に注意を払うべきでしょうか。

 

一般の善良な賃借人(入居者)の場合、現在の家主と賃借人が、退去(明け渡し)の条件を調えて、合意内容を書面(場合によっては公正証書)にし、入居者の実印と印鑑証明をもって取引を保全するという手続きを踏みます。

 

ところが賃借人にも色々なタイプの方がおられ、退去条件について合意したにも関わらず、撤回してみたり、やたらと「急な事情」がでてきたり、書面での合意があっても、期日までの退去を履行しないという方も出てきて、訴訟まで発展するというようなケースが見受けられたわけです。

 

万一、この入居者の退去を前提として売買契約等を締結していた場合、当然買主からも損害の賠償を求められることにもなり兼ねないので大変リスクの高い取引となります。

 

このようなリスクを避けるために、現在の入居者の退去を前提とする売買契約等の際には、

1.停止条件付契約

2.所有権移転請求権保全の仮登記

3.即決和解

という法律上のツールを使いこなす必要があります。

 

1.停止条件付契約

停止条件付契約とは簡単にいうと「ある条件が成立するまで、契約の効力発生を停止しておき、条件が成立したら契約が効力発生」というものです。したがって、このケースに当てはめて考えると「入居者が退去したら、土地の売買契約は成立する」という条件を付けた契約を結ぶことになります。

 

そして万一入居者が退去の合意を履行しなかった場合、売買契約自体も成立しませんので、契約は白紙撤回(なかったもの)となります。もちろん違約金が発生することはありません。よって、現在入居者が存在する不動産を売買したり賃貸借すること等を検討しているならば、契約書の条項がこの「停止条件付契約」に沿ったものになっているかどうかをよく確認しておく必要があります。

 

2.所有権移転請求権保全のための仮登記

売買契約が賃借人の都合によって白紙撤回されてしまうのは困るというケースも、実際の不動産取引の現場では当然にあります。売主にも買主にもスケジュールや都合というものがあるのです。したがって取引を保全するために、例えば賃借人と退去の合意に至った段階で、所有権移転請求権保全のための仮登記を行うというようなことも必要になります。

 

3.即決和解

即決和解とは、民事訴訟法第275条(訴え提起前の和解)に基づいて、過去に民事上の争い(退去条件でもめた等)があったという場合、また今後争いが起こるおそれがある場合に、合意内容を簡易裁判所に申し立て、裁判所のお墨付きをもらうというものです。

 

例えば「3か月後に退去する」という内容の合意が書面によってなされていても、その3か月後に実際に退去が履行されなかった場合は、改めて建物明渡請求訴訟を提起して争っていかなければなりません。そうなると当然、かなりの期間と費用を要することになるでしょう。

 

しかし、即決和解の手続きを経ていれば、すぐに強制執行に着手することができます(この点が公正証書と異なります)。つまり即決和解は確定判決と同等の効力をもつのです。即決和解の申し立てから和解期日指定までおよそ1か月、費用は2,000円程度です。ただ、司法書士等の専門家に必要な書類の収集と作成等を依頼する方が現実的ですので、その手数料等は含めて検討しておきましょう。

 

楽府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎

 

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