借地・借家の立ち退き料とは〜その2〜

  • 2018.07.29 Sunday
  • 12:55

借地・借家の立ち退き料とは〜その1〜で記述した「立ち退き料の要素」についてもう少し深く考察してみましょう。

 

まず、立ち退き料の要素には次のものが含まれています。

 

1.立ち退きによって消滅する敷地利用権、建物利用権の補償

2.立ち退きによって賃借人が失う利益の補償

3.立ち退きによって賃借人が支払うこととなる費用の補償

 

1.立ち退きによって消滅する敷地利用権・建物利用権の補償

これら利用権は財産権でもあります。賃貸人の事情により、賃借人のもつこれら財産権を消滅させることになるので、この補償が必要であると認められる場合に立ち退き料が発生します。ここでは敷地利用権を借地権、建物利用権を借家権と定義して考えてみましょう。

 

借地権の場合、その譲渡性が法律上きちんと決められています。旧借地法九条ノ二、四条、十条、また新借地借家法第19条等を読んでみると「賃貸人に不利となるおそれがないにも関わらず、賃貸人が借地権の譲渡・転貸を承諾しない場合には、裁判所が賃貸人に代わって許可を与えることができますよ」というような言い回しで、借地権者が投下資本を回収し、その財産権に見合った利益を享受することを認めています。

 

一方、借家権ではその譲渡性は認められません。賃貸人に不利となるおそれがなくても、転貸(また貸し)してはいけませんし、裁判所が賃貸人に代わって許可を与えることもありません。その意味では借家権は借地権よりも物権的性格が弱いということはできます。とはいえ、例えば賃貸人に正当事由といえるほどの事由がなく、賃借人も明渡には同意しているというような状況になった時、仮に立ち退き料についての合意に至らなければ、賃借人は居住し続けることができます。これが借家権における財産権に見合った利益の享受と解されているわけです。

 

ちなみに、借地権も借家権も、無断で譲渡することは認められず、契約終了の原因として認められる重大な違反行為(民法第612条)ですので注意が必要です。

 

2.立ち退きによって賃借人が失う利益の補償

例えば、商売における不動産を考えた場合、同じ町内で同じ商売をやることになったとしても、道路付けや、光の当たり方、駐車場の整備状況の変化、また競合との関係性の変化等で、利益は大きく変わることがあります。移転によっての失客というのは少なからずあることでしょう。また住居としての不動産を考えた場合、道路一本隔てるだけで、生活環境ががらりと変わるというのは、よくあることです。交通の便が変わる、子供の校区が変わる、公租公課の負担が変わる等の事実が発生するという事情もあるかもしれません。

 

このような立ち退きによって生じる変化から被る「不利益」に対する補償は、立ち退き料の目的となることがあります。

 

ここでは、商売における不動産の財産的価値を営業権、居住における不動産の財産的価値を居住権と定義して考えてみましょう。

 

営業権の侵害への補償としての立ち退き料には、その他とは独立して補償することを検討していくことが一般的です。従前と同一の営業内容を同一の設備で行うためには実際いくらかかるのか、移転期間中の休業補償はいくらになるのか、また移転先で最初から従前の利益が上げられるわけではないので、その軌道にのるまでの利益の減収分はいくらになるのかといった要素を個々に検討していくことになります。

 

一方、居住権の侵害への補償としての立ち退き料は独立して検討することが困難です。営業権のように「何円の損害があった」というのが明確なわけではなく「買い物が不便になった」とか「子供の学校区が変わった」のように、現金換算することが難しい精神的な要素が強いからです。したがって居住権の侵害への補償としては、前述の立ち退きによって消滅する敷地利用権・建物利用権の補償に含ませることが一般的です。

 

3.立ち退きによって賃借人が支払うこととなる費用の補償

具多的には、引っ越し代、次の不動産の取得・確保のための費用、賃料差額等の補償です。移転にかかる実費と考えるのがイメージしやすいものです。例えば引っ越し代には、運搬や梱包、保険だけでなく、エアコンの取り外しや再取り付け、移転通知費用等が含まれるかもしれません。また不動産の取得・確保のための費用には、移転先の敷金、権利金、仲介手数料、保証会社保証料等が含まれるかもしれません。さらに現在の家賃が50,000円/月で、新居が55,000円/月のものしか確保できなかったというような場合には、月額賃料差額5,000円に補償月数を乗じ、中間利息控除を行った金額の補償が行われることがあるかもしれません。

 

現場においては、これら立ち退き料の要素を個別に検討して、算定を行っていくことになります。とはいえ、立ち退きを円滑に進めるための要素は「和」であることを忘れてはなりません。利己的に自分の権利や自分の金額を追い求める当事者になってしまうと、本人に見える、見えないに関わらず、必ず損失が生じるようになっているようです。

 

 

楽府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎
 
不動産の売却、買い取りのご相談は
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TEL 042-656-7414
 
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