借地・借家の立ち退き料とは〜その4〜その他の貸し手の事情は正当事由になるか

  • 2018.08.09 Thursday
  • 18:36

前回は貸し手自身やその家族の居住の必要性が、借地・借家の立ち退きをお願いできる正当事由になるかを検討しました。

 

しかし、貸し手(≒オーナー。以下同じ)が、賃貸借関係を解消したいと思う瞬間は、自身や家族の居住の必要性だけに限りません。そのような場合にも正当事由が認められるケースはあるのでしょうか。今日はこの点を考察してみましょう。

 

1.オーナーやオーナーの家族が収益を最大化するためにその不動産を使用する必要がある場合

不動産の現場でありがちなのはやはり、賃貸中の物件を建て直し、収益を最大化しようとするケースです。

 

例えば、現在4LDKの一戸建てを貸家にして家賃を月額12万円もらっているが、最近近くに工場ができて、単身世帯が増えてきたので、1LDKを4部屋のアパートを建てれば7万円×4部屋=28万円の月額賃料になるという計算が成り立つ場合です。オーナーとしては、どうにかして現在の一戸建ての賃借人に立ち退いてもらいたいと考えるかもしれません。

 

このような場合、オーナー側のその土地の使用の必要性の程度は、かなり低いと判断されます。というのも、借りている側にとっては生活の本拠となっており、オーナーの利益のために、借りている側の生活に大きな影響を及ぼすのは公平ではないと司法は判断することが多いからです。したがって例えば貸家の契約で、当該貸家建物が老朽化していて倒壊の危険があるというような事情があるのでなければ、たとえ立ち退き料を提供しても正当事由を補完しているとは認められないことがほとんどです。

 

では、この「老朽化していて倒壊の危険がある」かどうかは、一体どのように判断されるのでしょうか。

もちろん、不動産は一つとして同じものはないので、ケースバイケースでその危険性が判断されることとなるのは大前提です。しかし例えば、建築基準法第10条には、建築物等について「損傷、腐食、その他劣化が進み、放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となる場合、特定行政庁は必要な勧告をする」と述べており、同2項、3項においては「必要な命令をする」旨述べています。

 

もしかすると、街で放置されたような空き家に、特定行政庁(市町村等)からの「この建物は危ないから、所有者や管理者はなんとかしなさい」という趣旨の勧告や命令が書かれた張り紙がされているのを見たことがあるかもしれません。

 

実際にこれらの勧告等を受けている際には、立ち退き料の支払いにより正当事由が補完されていると認められるケースが多くなっているようです。

 

2.オーナーが営業(商売)のために、不動産を使用する必要がある場合

賃貸している建物をそのまま店舗や倉庫として、あるいはその建物を取り壊して店舗を新築し、そこで商売をしようとする場合にも、オーナーには不動産自己使用の必要が認められます。オーナーがその場所で商売することに差し迫った必要性がある場合には、正当事由が強くなりがちです。とはいえ、当然賃借人側も生活の拠点としていたり、商売を行っていたりするわけですから、当然にその事情も鑑みる必要があります。賃借人側の営業の規模、どれほどの売り上げをそこで上げているのか、また同じような条件の他の物件(代替物件)をみつけることができるかどうかという必要性の程度が判断の重要な要素となります。

 

しかし現実問題「その場所で商売する差し迫った必要性」というのはなかなかレアケースですし、オーナー側が単に事業拡張のために賃借人に立ち退きを求めるとなると、司法の場における決着では、立ち退き料を支払っても正当事由が補完されていると判断されるのは難しくなるようです。

 

3.とにかく不動産を売って現金化することを急がれる場合

例えば相続が発生して、相続税の支払いは相続があったことを知った日の翌日から10か月以内という期限がありますので、それを支払うため急いで不動産を現金化しなければならないというようなことがあります。ところが、不動産が借地人がいる、借家人がいるとなると、収益評価がされることになり、今不動産が稼いでいる賃料を基準として買手は物件を評価します。例えば更地なら100万円/坪で売れる土地なのに、借地権が設定されて賃借されているので30万円/坪でしか売れないということは一般的なことです。

 

そのため、高く売るためには賃借人との契約を解除しなければならないというようなケースもあります。

 

しかしこの場合でも、オーナー側に他に処分すべき財産がないとか、収益物件として買手を探すことは非常に困難であるというような事情があるのでなければ、オーナー側の立場は非常に弱くなり、立ち退き料をもって正当事由を補完するのは困難となってきますので注意が必要です。したがってこのようなケースではたいていの場合、収益物件を買い取ることのできる、免許を受けた宅建業者に買取を依頼される方が多いようです。

 

楽府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎
 
不動産の売却、買い取りのご相談は
http://gafu.asia
メール info@gafu.asia
TEL 042-656-7414

 

併せて読みたい記事;

「借地・借家の立ち退き料とは〜その1」

「借地・借家の立ち退き料とは〜その2」

「借地・借家の立ち退き料とは〜その3〜自分や家族の居住の必要性は正当事由になるか」

 

JUGEMテーマ:アパート経営・賃貸経営

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