エアコンが壊れた賃貸物件のエアコンの修理費用は誰が負担すべきか

  • 2018.07.15 Sunday
  • 12:40

先日の豪雨災害で私の故郷である北部九州地方ではかなり大きな被害を受けました。


昨年の北部九州豪雨被害からの復興も完全に成し遂げられていない中での再びの被災で、クライアントや友人も「気持ちが折れそう」と語っていました。また先週、同じく豪雨被害を受けた中国地方(広島県、岡山県)を訪問させていただく機会がありましたが、こちらも大きく報じられているように、甚大な被害を受けており、普段の生活に戻るのはなかなか難しい状況のようです。

 

さて、先週の豪雨から一転、大変暑い日が続いています。この記事を書いている時点では、まだ午前中にも関わらずこちら八王子市は32℃の気温となっております。

 

このように異常な暑さが、異常ではなく通常になってくるとやはりどうしてもエアコンが生活必需品となってきます。賃貸経営をしていると、以前の大家や店子がエアコンを残したままにしていることがあり、そのまま部屋を貸しているというようなことがあるのではないでしょうか。

 

 

最初は「自分でエアコンを買って取り付けてあげる手間と費用がかからなくて良かった」と思うかもしれません。しかし、時間が経ってこのエアコンが壊れた時が問題となります。

 

賃貸仲介業者は「部屋にエアコンあり」と説明していますし、たいていの場合、入居者も内見の際にエアコンが付いていることを確認して入居を決めているはずです。しかし大家としては「前の持ち主が置いていったもので、まだ使えるのであればどうぞご自由に使ってください」という考え方でしょう。したがって「エアコンが壊れた」という事態になった時に、全員が「自分の持ち物ではないのだから、あなたが何とかしてください」という気持ちになっているかもしれません。

 

この点について民法は、第606条で「賃貸人は賃貸物を使用収益するために必要な修繕を行う義務がある」と書いています。法律的に考えると、部屋についていたエアコンは、前の所有者がその所有権を放棄したものであると考えるのが合理的でしょう。したがって、エアコンを含めて部屋を貸すという事業を行い、家賃という対価を頂いている以上は、当然、大家はエアコンについても責任を負い、修繕を行う義務が発生すると考えられます。よろしいでしょうか。「義務」です!

 

現場では「サービス設置品だから」等と言い逃れをして義務を逃れようとする大家が大勢います。しかし家賃を頂くという「権利」には「義務」が付随することを忘れてはなりません。どうしてもエアコンの故障を修理したくないのであれば、最初から取り外して市場に出すか、賃貸契約の時点で「エアコンはあなたにあげます。所有権はあなたのものです。だから何があっても責任はとりませんよ。もちろん退去の時には持って行っていただいて構いません。それで良いですね?」と伝えた上で、借主の了承を得る必要があります。

 

しかしそもそも「法律的にどうなのか」等を考えているようでは大家失格です。不動産を貸して家賃を頂くというのは「事業」です。もちろん、借入金の返済や、不動産に係る税金の支払いにお金がかかることは分かります。ですがお金を頂くからには、お金を頂けるだけのサービスを提供しなければなりません。

 

「物件の維持管理や修理、清掃は一切行いません。でもお金はもらいます」というような事業が成立するわけがありません。

 

大家として不動産賃貸業を行っているオーナーにはその意識の欠如ゆえに、大損をしている方が多数いらっしゃいます。地域特性や管理会社、そして仲介会社のせいにして転々と不動産業者を回るオーナーの噂は、この業界ではよく耳に入るものです。そのようなオーナーの物件は少しずつ過疎化していき、いつしか廃墟のようになり、結局市場で安く買いたたかれるというような残念な結末を本当によくみかけます。

 

しかしせっかくご縁あって、不動産を取得し、テナントが入居してくださっているのですから、このご縁はとにかく大切にしなければなりません。目先の利回りに目が曇って、本当に大切なことを見抜けないようでは、人口減少と不動産供給の増加、そして気候変動といった要素が加わる激動の市場で生き残ることは難しいでしょう。

 

楽府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎

 

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「少子高齢化と学生向けの住居」

「物事を思い通りに進めるためには」

 

遺産分割協議書を自分で作成する際の書き方と注意点

  • 2018.07.14 Saturday
  • 13:19

人間は(今のところ?)必ず死を迎えることとなります。問題はそれがいつなのかが分からないことです。また死という概念の捉え方は人によってそれぞれです。したがって、前もって「自分がいつ死を迎えても良いように」と周到に準備をする方もいらっしゃれば、自らの死を現実的に受け止めることができず(せず)に「あとは野となれ山となれ」という考え方の方もいらっしゃいます。理想としては、毎年、誕生日などの節目に、刻々と変化する現在の状況を全てきちんと整理して、遺言を更新していくことなのかもしれませんが、現実はなかなか難しいでしょう。

 

さて、いつ死を迎えるかというのが分からない中で、遺言なく死を迎え相続が発生してしまった場合、あるいは遺言があっても財産の増減や人間関係の移り変わり等の変化があって、やはりもう一度分配を決め直さないといけない場合、さらには相続人が複数人いる場合。この場合には、法定相続人は相続財産をどのように分配するかを決める必要が出てきます。これを遺産分割協議といいます。その結果、遺言の内容とは異なる相続財産の分配方法とすることも可能ではあります。

 

いずれにしても分配を決めたのであれば、後からトラブルにならないように、その決めた内容を書面にして保存しておくことが大切です。この書面を遺産分割協議書といいます。

 

よく「私の子供(相続人)たちは、とても仲が良いから、相続対策は必要ない」と言われる方がいらっしゃいます。第三者の目から見ても確かに仲が良く、人も出来ているので相続でもめそうな感じありません。しかし、状況は常に変化していくものです。仲が良いからこそ、相続と言うのはトラブルが発生するものなのです。仲が良いからこそ不動産を共有し、管理実務上の理由から負担の格差が広がっていき、不公平感から感情的なもつれになり、感情的なもつれが金銭的なもつれに変化していくのを、数えきれないほど見てきました(参考;「相続した共有の不動産をどうするか」)。

 

今は仲が良くても、そして幸いなことに将来の子孫も仲が良かったとしても、将来、子から孫に再び相続しなければならない時に、遺産分割協議書が作成されていれば、祖父の代でどのように相続財産が分配されたのか等の正確な情報を得ることができ、大変都合が良くなるわけです。というのも、遺産分割協議が行われて遺産分割協議書が作成され、持ち分が確定していなければ相続財産である不動産の持ち分を使用収益したり処分(売却)したりすることが難しいからです。したがって、面倒がらずに遺産分割協議書をきちんと作成しておくことが重要です。

 

登録を受けた司法書士や税理士等の資格者が、提供している相続サービスの一環として遺産分割協議と遺産分割協議書の作成を行うこともありますが、特に資格者により作成しなければいけないというわけではありません。法定相続人が自分たちで作成することができます。また相続人による署名と住所の記載は自筆ですが、内容部分は手書きでもパソコン(ワープロ)でも構いません。

 

〇表題を書く

特に決まりはありません。「遺産分割協議書」等で良いでしょう。

 

〇被相続人を明らかにする

誰の遺産を分割するのかです。被相続人、つまり亡くなった方の情報を書きます。書くのは以下です。

1.氏名

2.本籍地

3.最終の住所地

4.生年月日

5.死亡日

 

〇相続人を明らかにする

誰が遺産を受け取るのか、相続人全員分の情報をそれぞれ書きます。書くのは以下です。

1.氏名

2.住所

3.被相続人との関係

 

〇対象となる遺産の内容と分割割合を明らかにする

対象となる遺産とその内容、そしてどのように分けるのかを明らかにします。

 

対象となる遺産が不動産の場合は、不動産登記簿謄本(全部事項証明書)を取得し、その表題部をそのまま書き写します。不動産登記簿謄本は土地と建物は別になっているので、土地の不動産登記簿謄本と建物の不動産登記簿謄本をそれぞれ用意することが重要です。

 

土地は、実際は一面の土地として利用しているようでも、数筆に分かれていることがありますので注意が必要です。同じく建物も、一棟の建物のように見えても、別個の建物として登記されていることがありますので注意が必要です。また建物に関しては実際は存在しているのに、登記の情報はないこともありますのでご注意ください。

 

土地の場合は、所在、地番、地目、地積(面積)を書き記します。建物の場合は、種類、構造、床面積を書き記します。

 

不動産の代償分割を行う場合には、誰が誰に、いつまでに、いくらの代償金を支払うのかを書き記します。

 

また対象となる遺産が預貯金の場合は、通帳や証書を見ながら、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義人を正確に書き記します。

 

〇自筆での署名と実印の捺印

遺産分割協議の内容に間違いがないことを確認した後、自筆で署名を行い、住所(印鑑証明書と同じ)を書き記し、実印を捺印します。署名した日時も忘れずに記入しておきましょう。

 

〇相続人の人数分+1部同じものを作成し、全てに全員が契印と割印を押印する

遺産分割協議書は、相続人の人数分+1部を作成します。相続人が3人なら4部作成しておきます。不動産の相続登記を行う際には、遺産分割協議書原本と相続人それぞれの印鑑証明書が必要になるからです。印鑑証明書は予め準備しておきましょう。

 

書類が複数ページに渡る時には、ホッチキスで止め、製本テープ(100均等で購入可能)でまとめた上で、製本テープと書類を割るように契印します。また遺産分割協議書は複数冊作成されるので、全ての遺産分割協議書が真正であることを証明するため、それぞれを重ねて割印をします。

 

なお「自分は何も相続しない」という場合であっても、後のトラブル防止のために、遺産分割協議書に署名捺印し大切に保管しておく必要があります。

 

〇ひな形

以上を踏まえると下記のようになります。


「遺産分割協議書」

 

被相続人 

  不動 産太郎

 

本籍地

  東京都八王子市〇〇町△番地□号

 

最終の住所地

  東京都新宿区西新宿一丁目〇番△号

 

生年月日

  昭和〇年△月□日

 

死亡日

  平成〇年△月□日

 

被相続人不動産太郎の遺産相続について相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記の通り被相続人の遺産を分割取得することに合意した。

 

1.下記不動産について、被相続人の妻不動産子が取得する

 

【土地】

所在

  東京都新宿区西新宿一丁目

 

地番

  〇番□

 

地目

  宅地

 

地積

  〇〇.□□平方メートル

 

以上、計一筆

 

【建物】

所在

  東京都新宿区西新宿一丁目〇番□

 

家屋番号

  〇番□-△

 

種類

  居宅

 

構造

  木造スレート葺2階建

 

床面積

  1階〇〇.△□平方メートル

  2階〇〇.△□平方メートル

 

以上、計一棟

 

2.下記の預貯金は長男不動産男が取得する

  〇〇銀行 □□支店

  普通預金 口座番号1234567

  口座名義人 不動 産太郎

 

3.被相続人のその他の財産は次男不動産多が取得する

 

以上の通り相続人全員により遺産分割協議が行われ成立したことを証明するため、遺産分割協議書を4通作成し、相続人全員が署名捺印の上、各一通ずつ所持することとする。

 

平成〇年△月□日(作成日)

 

相続人(妻) 不動 産子  実印

生年月日 昭和〇年□□月△日

住所 東京都新宿区西新宿一丁目〇番□(印鑑証明書の住所であること)

 

相続人(長男) 不動 産男  実印

生年月日 昭和□□年〇月×日

住所 東京都港区六本木三丁目〇番△号〇〇マンション×××(印鑑証明書の住所であること)

 

相続人(次男) 不動 産多  実印

生年月日 平成〇年□月△日

住所 大阪府豊中市緑丘二丁目×番□号(印鑑証明の住所であること)

 


 

相続が発生すると、傷心の中慣れない作業を行っていく必要が出てきます。

特に不動産が絡む場合には、抜け漏れがないように、また関係法令や税制との兼ね合いも考えて進めていくことが重要です。

 

いざという時に慌ててしまい失敗することがないよう、なるべく早く信頼できる専門家をみつけておき、十分前もって準備しておくことがとても大切になります。

 

 

楽府株式会社 宅地建物取引士 永 秀一郎

 

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「相続した不動産を遺産分割協議前に売ることはできるか」

「相続した共有の不動産をどうすべきか」

 

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相続した不動産を遺産分割協議前に売ることはできるか

  • 2018.07.13 Friday
  • 19:53

実際に相続が発生すると、かなり慌ただしく動くことになります。

 

そもそも大切な家族を亡くして精神的に大きなショックを受けているところに、色々な物事を整理していく必要があります。

加えて相続税の申告期限の問題もあります。相続税の申告期限は、相続が発生したことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。

 

相続人が複数存在する場合、後の憂いを防ぐため遺産分割協議を行って、遺産分割協議書を作成しておくことが重要です。遺言書が存在し、相続財産の全てについて相続人や受遺者が指定されていれば作る必要はありません。しかし例えば「建物は〇〇に与える」というように、不動産の一部についてしか相続人が指定されていないような場合、では土地についてはどうなのか、遠く離れた故郷のその存在さえ忘れていた山林はどうするのか、あるいは倉庫の奥深くで数十年眠ったままになって忘れられている骨董品はどうなのかというように、意外と抜けや漏れがあることがありますので、遺言で指定されなかった残りの財産について相続をどうするのか決めなければなりません。このような場合にはやはり遺産分割協議を行い、その証として遺産分割協議書を作成した方が良いわけです。

 

さて、上で述べたように、相続税には申告期限というものが存在します。これに加えて債務の履行(借金の返済等)のために、相続した土地や建物を急いで現金化しないといけないことがあるものです。ところが家族には、相続人の一人が連絡が取れない、遠い国に行っている等の色々な事情が存在することがあります。つまりすぐに遺産分割協議書を作成して実印を押印することが出来ない事情があるかもしれません。このような場合どのようにすれば良いのでしょうか。

 

民法第896条によると、相続人は相続開始の時から、被相続人に属した一切の権利義務(ただし被相続人の一身に属するものを除く)を承継するとなっています。また不動産登記法第63条第2項によると、相続による権利の移転の登記は、登記権利者が単独ですることができると書かれています。そして民法第898条によると、相続人が数人あるときは、相続財産は共有であると書かれています。

 

これらの条文から、仮に遺産分割協議が行われて遺産分割協議書が作成されていないとしても、基本的には相続財産と言うのは共有であり、共有者であれば登記権利者でもあるので、相続を原因として共同相続の登記申請を単独で行うことができることが分かります。したがって、例えば納税しなければならないので、相続財産の一部である土地と建物といった不動産を売ってしまって現金化したいと思ったのであれば、

 

1.まず相続を原因として共同相続の登記申請を行い

2.相続人全員の同意を得た上で

3.不動産を売却する

 

という形をとることで、遺産分割協議が行えない、あるいは遺産分割協議がまとまらないといった事態であっても、とりあえず不動産を現金化することは可能となります。具体的には「不動産を売ることは決まっている。そのことは全員が合意できている。まだ分け前が決まっていないけども」というような時に使うということになります。

 

また法定相続人が第三者への不動産を売却した後に「実は遺言書がありました」と、後から遺言書の存在が明らかになることがあります。そして「不動産は〇〇に譲る」というような一文があった場合。この場合は対抗要件の問題となり、この不動産を買った第三者と受贈者(上の〇〇)の内、登記を早く具備したものが不動産の所有権を取得(民法第177条)することになります。

 

なお、知事または大臣の免許を受けた宅地建物取引業者による媒介が行われる場合は、必ず、登録を受けた司法書士による確認の下、手続きが行われていくことになるはずです。「宅建(取引士)試験に合格したから自分でできる」というような方もおられますが、取引士の資格と免許を受けた宅地建物取引業者であることは全くの別物です。免許を受けた宅地建物取引業者の媒介によらずに自力で不動産取引等を行い、手続きに抜け漏れ等があると、ほぼ間違いなく損害賠償請求という話になってきますので注意が必要です。

 

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改正民法で相続は何が変わるの?【その2】

  • 2018.07.12 Thursday
  • 12:42

改正民法で相続は何が変わるの?【その1】はこちら

 

昭和55年以来、約40年ぶりの改正となる相続部分の民法改正。

復習ですが、覚えておくべき重要なポイントは3つです。

 

1.配偶者居住権の新設

2.相続対象でない人も(看護や介護の)対価を請求できるようになった

3.自筆遺言証書を法務局に預けられるようになった

 

詳細は改税民法で相続は何が変わるの?【その1】をご覧いただくとして、今日はもう少し深く掘り下げて考えてみましょう。

特に「1.配偶者居住権が新設」されることの影響は、不動産取引関係者にとって頭に留めておくべき重要な事項です。

 

まず、配偶者居住権とは、相続が開始した時に同居していた配偶者は、原則として、賃料等を支払うことなくその家に住み続けることができる権利です。

 

この権利について、上澄み液部分をとにかく簡単に、とにかくイメージしやすい例で考えると、

「高齢の夫婦が持ち家に住んでいて、おじいちゃんが亡くなった時に、おばあちゃんは家の所有権を相続できなくても、おばあちゃんは今まで通りそこに住んで良いですよ。おばあちゃんの家ではありませんけど、家賃を誰かに払わなくても良いですよ。」

と、そういう権利です。

 

さて、この例に出てくる家が、おじいちゃんが昔バリバリのサラリーマンだったときに建てた家で、月賦(ローン)も返し終わった。という家であれば問題はありません。しかし現実問題として、全部の家がそうであるとは限りません。

 

例えば、亡くなったおじいちゃんがまだ生きている時に、何かの目的でお金が必要となり、この住宅を担保にしてお金を借りていた場合。担保権者は予想できなかったリスクに遭遇することになります。

 

配偶者居住権は、相続開始後に遺産分割協議で決めて取得するか、遺言書で書いておくことによって設定することができます。したがって、不動産を担保にするその時には「配偶者居住権は発生しないだろう」と思っていても、担保設定後に配偶者居住権が発生してしまうことがあるわけです。こうなると万一債務不履行があって、担保権の実行を行おうとしても配偶者居住権をもった居住者が住んでいて自由に土地を使用収益することができませんので、担保評価割れのリスクがあるということになります。

 

ならばと担保権の設定時に「配偶者居住権は発生させないものとする」等の特約を入れるのはどうでしょうか。さてその特約の実効性は疑わしいものがあります。裁判所がどう判断するか、なんとなく想像がつくのではないでしょうか。ある程度の違約金は認められるかもしれませんが、衡平の観点から、担保権者にも責任があると判断され、本当に「ある程度」になりそうな気がします。

 

配偶者居住権は登記をすることができ、また登記請求権が発生します。よって他の権利との兼ね合いがある場合には、登記の先後による対抗関係の問題になってきます。登記の順位が上であれば、つまり配偶者居住権よりも先に担保権の登記をすることにより優先されることになります。登記請求権のない賃借権とは異なり、配偶者居住権は請求権があると解されるので、登記の数も増えていくことでしょう。したがって、不動産を担保にする際にはこれまで以上に、登記を先に具備することが重要となってきます。

 

とはいえ登記で優先しているからといって、自由に担保不動産を使用収益することができるわけではありません。いずれにしてもお住まいになられている配偶者居住権者と交渉して"落としどころ"を探していくというひと手間が必要になることは言うまでもないわけです。落としどころは各家庭の事情に応じたオーダーメイドになります。特に自宅には、他人が思っている以上に気持ちが込められていることが多いので「法律的にはこちらが正しい」と強硬な姿勢で臨むようだと、予想以上に苦労するでしょう。

 

改正民法は、今までよりも現在の実際に即した使いやすい法律となることは間違いありません。

是非上手に活用して、不動産と末永く上手に付き合っていただきたいと思います。

 

楽府株式会社 宅地建物取引士 永秀一郎

 

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改正民法で相続は何が変わるの?【その1】

  • 2018.07.11 Wednesday
  • 12:56

平成30年7月6日に、民法の相続分野の規定が約40年ぶりに改正される、改正民法など関連法が参議院本会議で可決成立しました。目的は相続の際に、配偶者がなるべく優遇されるようにすることです。2020年7月までに施行されることになっています。

 

では、これまでの相続と何が変わったのでしょうか。

 

変更点は大きく分けて3つです。

1.配偶者の居住権の新設

2.相続対象でない人も対価を請求できるようになった

3.自筆証書遺言を法務局に預けられるようになった

という3つです。

 

1.配偶者の居住権の新設

今まで、遺言がないままに相続が発生すると、基本的には、民法で定められた相続分(法定相続分)に沿って、現金や不動産等の財産を分けていました(民法887、889、890、900、907)

 

例えば現金1,000万円と自宅の不動産1,000万円の合計2,000万円を残して、ご主人が亡くなった場合を考えてみましょう。法定相続分に則って相続するとなると、これら合計2,000万円の相続財産を奥さんと2人の子供で分けることになります。法定相続分は奥さんが1/2の1,000万円分、2人の子供が残りの1/2を2人で分けて、それぞれ500万円分ずつとなります。

 

この場合に、自宅の不動産は奥さん一人で住むには広すぎるから、売って現金化してから、現金2,000万円の相続財産を奥さんと子供たちで分けるというような柔軟な対応ができれば問題にはなりません。あるいは2人の子供は成人してそれぞれ独立しており、また立派な考え方ができる人間として成長しており「自分たち子供は財産とか要らないから、お父さんを長年支えてきたのは母さんなんだから、全部母さんが相続して良いよ」というような話でまとまれば問題にはなりません。

 

ところが現実問題として、奥さんは住み慣れた家を離れたくない。子供たちも何かと入用ということがあったり、色々な事情で疎遠にならざるを得ないというようなことがあったりします。ならば自宅の不動産の1,000万円は奥さんが相続し、現金の1,000万円を子供たちで分けるしかないよね。という相続のやり方になります。

 

しかしこの相続のやり方には大きな問題がありました。奥さんが生活資金等で困窮するようになるケースがとても多くなってきたのです。結局自宅の不動産を急いで売らざるを得なくなり、急いで売らざるを得ないので売却金額も低くなり、寂しい結末となることがよくある話なのです。

 

そこで、先日成立した改正民法では、配偶者の居住権という権利を創設し、それ自体を相続財産とすることができるようになったのです。

 

配偶者居住権とは、例えばご主人が亡くなった時に一緒に住んでいた奥さんは、住んでいた家の所有権を相続しなくても、また家賃を払わなくても、これまで通りそこに住み続けることができるという権利です。したがって、家の所有権自体は子供たちに、居住権は奥さんに、という相続ができるようになります。

 

この権利は配偶者(この例では一緒に住んでいた奥さん)の年齢に応じて評価額が変わってきます。仮に配偶者居住権が500万円という評価だったとすると、奥さんが相続できるのは居住権と現金500万円に増えるということになり、奥さんは住み慣れた家に自分が亡くなるまで住み続ける権利と、生活資金としての現金も相続できるようになるというわけです。

 

2.相続対象でない人も対価を請求できるようになった

今までの民法では、法定相続人はその優先順に、配偶者、子、親、兄弟となっていました。

したがって、例えばご主人の両親、つまり義理の父や義理の母等の介護をして、献身的に面倒をみたとしても、ご主人の両親が亡くなった時には何も相続分はありませんでした。もちろん何かを得ようとして面倒を見てきたわけではないかもしれませんが、その働きに見合う何かしらの対価があっても良いのは当然のことです。

 

そこで改正民法では、亡くなった人を看護・介護していた場合に、その財産を相続した人に対価としての金銭を請求できるようになりました。(金額はまだ定かではありません)

 

3.自筆証書遺言を法務局に預けられるようになった

相続トラブルを避けるためには遺言書の作成が必須ですが、法的に有効な遺言とするために、いくつかの条件をクリアしなければならず、わりと手間と費用がかかるのが難点でした。またせっかく作った遺言書も、その後の色々な事情があって、遺言の内容を変えたくなったり、結局どこに保管したのか分からない(一番多いのは「どこにしまい込んだか忘れた」次に「家族にみつけてもらえない」パターンです)というようなことがありました。人によっては弁護士や司法書士、または銀行の貸金庫等に保管してもらうという選択肢を検討することになるのですが、費用や手続きの煩雑さが問題になっていました。

 

改正民法では、自筆遺言証書を数千円の費用で法務局で保管することができるようになります。

 

法務局では自筆遺言証書が法律上の要件を満たしているかの確認が行われたのちに、原本は保管、内容は画像データとして記録されるようになります。

 

そして相続が実際に発生した場合、誰でも遺言書の有無の確認ができます。また相続人などの関係者は、遺言が保管されている法務局で原本の閲覧を、全国の法務局で遺言内容の画像データの確認をそれぞれ行うことができるようになります。さらに、これらの原本の閲覧や画像データの確認を誰かが行うと、全ての相続人に対して遺言書が保管されているという事実を通知することになっています。

 

しかし相続が発生した時に自動的に法務局が遺言書の存在を通知してくれるわけではありません。法務局に遺言書の存在を家族が確認しなければなりません。したがって当然、事前に遺言書が法務局に保管されていることを家族には教えておく必要がありますのでご注意ください。

 

また遺言書を書き直した場合には、その都度法務局で、以前の遺言書の保管を撤回し、新しい遺言書の保管を行うようにしなければなりませんのでこの点にも注意が必要です。

 

【併せて読みたい記事】→改正民法で相続は何が変わるの?【その2】

 

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